カメラバッグを一つ買い足しました。タムラック・ショルダーバッグの最大モデル614です。普段使っているカメラバッグ(エツミ・エアパック→詳細)に不満は全く無いし、これ以上の大きさのバッグを買っても、機材満載では重すぎて長時間歩けないと思うのですが、桜とか紅葉とか気合を入れて撮影するときにあとレンズ1〜2本が入らず、大判用と併せるとカメラバッグを3つ持ち歩くハメになる事がありました。それでもう少し大きめのバッグが欲しいと...実に3年も前から思っていました。しかし、KENがより大型のショルダーバッグを買わなかった事には理由があります。
その理由を語る前に、皆さんに質問したいと思います。カメラバッグのカタログを見て変な点(現実的では無い点)に気付きませんか?機材の収納例を写した写真なのですが....もしお手持ちのカタログがあれば見て下さい。カタログをお持ちでは無い人はインターネット上の代表例として、下記メーカーサイトの写真をご覧下さい。
ケンコー/タムラック614
http://www.tamrac.com/614.htm
エツミ・トゥルーリープロ35
http://www.etsumi.co.jp/item.asp?pid=i&i=E-3065
ハクバ・GW-PROショルダーバッグL
http://www.hakubaphoto.co.jp/catalog/bag/image/gw-pro_246070_l.1.jpg
さて、現実的ではない点とは...
常に、とは限らないのですが、真っ先に気付くことは「レンズにキャップがされていない」という事です。しかしこれはカタログ上の見栄えの為のささやかな事で、私たちが実際にレンズを収納するときにはキャップをすれば済むので、まあ良しとしましょう。次に私が気付いたのは、殆どの写真において「収納されているレンズにフードが無い」という事なのです。これは小さいようで、大問題なのです。
最近のカメラバッグの内部は緻密な工夫がされています。レンズをボディに付けたまま収納できる「レンズブリッジ」とか、カメラボディの下に収納スペースを儲ける空中パッドとか、レンズやストロボ収納を意識したそれぞれの専用スペースとか。しかし、それらの空間設計と空間を作るインナーパッドの設計が不適切(現実よりも小さい)と機材は収納できません。私が3年間もカメラバッグ選びをしている時に、買うのを躊躇ったのがこの点でした。大きさと機能、頑丈さの割に安価なエツミ・トゥルーリープロシリーズや、キプリングのプレステージモデルとか、あるいは極めて高価ですが定評のあるタムラックなど、カメラショップでどのバッグを見ても、内部の仕切り構造が悲しいほど細かくて、私の機材(..という事は日本のAF一眼レフシステムの一般的な機材)は全く入りそうにありません。仕切りぐらい付け方を変えれば良いのでは?と思われるでしょうが、小さな仕切り板(インナーパッド)で大きくて機材をしっかり保護出来る空間は上手く作れないのです。
しかし、数年前にハクバからインナーパッドだけが安価に売り出されて、この状況に少し光明が見えました。この単売インナーパッドのサイズは私の不満を見据えたように現実の機材サイズに合わせた物になっており、この事が今回のカメラバッグ購入の遠因になっています。貧乏性の私が最も高価なタムラック614を購入した理由は、内寸の高さがカタログ値26cmと大きくて、私の手持ちのシグマ170-500mmが立てて入る筈だからで(キャップ付き実測260mm)、手頃とは言えませんがリーズナブルな価格の中古が出現したので購入しました。
では、今回購入したカメラバッグを写真でご覧頂きながら、上に書いた「私が変だと思った点」を実証して行きましょう(笑)
まずはタムラック614のデフォルト状態(写真左)です。バッグ内部の大きさ(実測)は横幅44cmX奥行き23cmX深さ23cmで、カタログ値の44x23x26cmに対して深さが大幅に不足しています。底部クッションを取り除くと26cmの深さにはなるのですが、その状態では緩衝材が全く無いナイロン一枚で機材が地面とぶつかるので実用になりません。深さが3cmも足りないので当初目論見だったシグマ170-500を立てて収納する事は無理でした(蓋が閉まりません)。「タムラックのウソツキ!」と少し怒りモードのKEN(-"-)です。
次はカタログどおりに機材を収納した状態(写真右)です。レンズキャップはしていますが、フードとEF70-200/2.8Lの三脚座を外してあります。カタログ写真では三脚座がついたまま収納されていますが、写真で分るように現実は三脚座を外さないと仕切りパッドと干渉して収まりません。またストロボはケースから出して単体で入れてあります。Jの部分に入れてあるのは薄型の単体露出計です。なるほどほぼカタログどおりに見事に収納出来ました!しかし....
内部は合計11の空間に仕切られて、G/I/J/K以外の部分は更に上下二段に仕切られています。またこのバッグの特徴として文字列のA/B/C/D/Eの部分は写真で縦に見える仕切板の下部が8cmx8cm切り取られていて、望遠レンズ、グリップタイプのストロボなど長い物を収納できるぶち抜きスペースになっています(しかし長さが最大44cmもの空間でありながら、直径8cm程度の機材って何があるのでしょう??)。その機材を取り出すためのファスナー付き開口部がバッグ裏側に設けられています。各部のスペースですが、A/Eの開口部分は23cmX7cmでブースターの無い一眼ボディなら無理なく入ります。B/C/Dの部分の開口部は(写真上の横x縦)8.5cmX9cm、F/G/Hの部分が8.5cmX7cm、I/J/Kの部分が8.5cmX5cmです。これら中央部9個のスペースにはフードをつけたフィルター径77mmクラスの大径レンズは入りません。また上下二段に仕切られたスペースは、上下段共に深さが8〜12cmになりますのでタムロンマクロなどの中望遠レンズや大口径標準ズームなど長さのあるレンズも入りません。シグマ180マクロやEF70-200/2.8Lレベルのサイズのレンズは、フードを外して地下のぶち抜きスペースに1本、上部A/F/G部分にカメラ装着状態で1本の合計2本しか入りません。大口径標準ズームもフードを外してH/E部分にカメラ装着状態で1本だけです。従ってこの超大型ショルダーバッグにデフォルトで収納できるのは、カメラボディ2、70-200/2.8クラス望遠レンズ2(フード三脚座無し)、F2.8標準ズーム1、小径標準〜広角レンズ6、ストロボなど2〜3(ケース無し)、となります。私の機材の多数派である中望遠クラスが全く対応出来ていませんね〜。そして、実際の撮影に必要なフードや三脚座をつけると...
フードをつけたEF70-200/2.8Lとシグマ28-70/2.8EXは元もとのスペースに入らなくなり、半分ぐらい浮き上がってしまいます。もちろんバッグの蓋は閉まりません。またストロボの550EXはケースにスタンドが収納されているのと、ケース無しでバッグに入れると汚い底面で端子を汚しそうなのでケースごと収納したいのですが、こちらも入らなくなります。このカメラバッグのインナー設計した人は多分現実の撮影で機材を使ったことが無く、カタログ記載のレンズサイズ(フード、三脚座、キャップ類の無い寸法で表示されています)、機材サイズ(当然ケース無し)で設計したのでしょう。これでは使い物になりませんから、使いやすい形への改造に取りかかりましょう。
改造に使うハクバから発売されているインナーパッドです。右から20x15cm・1枚入り、16x15cm・2枚入りx2、8x15cm・4枚入りです。これだけ買っても実売で1000円程度なので助かります。
スペース設計のコツは、大きな物の収納から考える事と、大きなパッドでは全体を大きく仕切るに留めて、それ以上の細かい仕切りは小さな仕切りパッドで行い、その日の機材によって変幻自在に変化させる余地を残す事だと考えています。(この考え方に対してタムラック614のデフォルト状態は、最大の仕切りパッドを8.5cm間隔で並べてしまい、これ以上の大きさのある機材を一切受け付けなくしています。)もう一つ、カメラボディにレンズを装着した状態での収納には拘らない方が良いです。これはそのレンズを使っている時には極めて便利なのですが、レンズ交換した途端に外したレンズを収納する場所が無くなり、かなり不便だからです。全ての機材が独立して収納できた方が現場では便利です。そんな事を考えながら、パソコン上でスペースを設計してハクバのインナーパッドのどれを何枚買うか決めました。しかし20x15cmのパッドは結局使わなかったのだが、何で買ったの>KEN(^^;
この考えで最初にスペースを決めたのはEF70-200/2.8LとSigma AF180/3.5EX Macroのスペースです。それがA/Bで、それぞれ10x11cmのスペースを確保してフード三脚座付で入ります。次はSigma AF170-500/5-6.3で、下部のぶち抜きスペースに入れることにしました(C/Dの下部)。三脚座とフードという太い部分を避けて仕切りパッド(8x8cmの切り欠きあり)を配置することで少し窮屈ですが収納可能です。次はカメラボディです。大型カメラバッグの場合に奥行きはカメラボディの幅よりも大きく、カタログにあるような向きで収納するとデッドスペースが大きくなりますので、90度回転させて収納させるのが吉です。それがC/Dです。ボディが一台の場合はDのスペースを更に分ければ小径レンズ2本のスペースが生まれます(I/J)。そしてTamron SP-AF90/2.8 Macro、Macro APO-Lanthar125/2.5SLなどの中望遠スペースも数本分は必要なのでF/Gのスペースを作りました。残りのスペースEには小さなパッドを自由に配置することで、標準〜広角の小径レンズが無理なく3本、無理すれば4本収まるようにしました。このEの上には水平パッドが手前ヒンジで下りてきて、その上にまた自由なスペース(K)を作り出しています。残ったHにはフィルターケースなどの薄いアクセサリーが収納できます。
さて、これが実際の機材収納状態です。これでカメラボディ2台、70-200/2.8クラスの望遠レンズ3本(フードと三脚座付き!)、中望遠レンズクラス4本、標準〜広角レンズ3本が無理なく収まっています。
(この写真で収納されている機材)
A: Sigma AF180mm F3.5EX Macro
B: EF70-200mm F2.8L USM
C: EOS3 w/ BP-E1
D: EOS55 w/BP-50
C/Dの下部: Sigma AF170-500mm F5-6.3
E: EF28-70mm F3.5-4.5 USM, EF20-35mm F3.5-4.5
USM, Sigma AF15mm F2.8EX Fisheye
Eの上部: MP-E65mm F2.8 Macrophoto, Kenko MC
Soft 85mm F2.5
F: Voigtlander Macro APO-Lanthar 125mm F2.5SL
G: Tamron SP-AF90mm F2.8 Macro
タムラックのデフォルト状態よりも多数のレンズがフード付で収納できており、ず〜〜っと使いやすくなりました。持って行く機材が変っても、カメラボディのある手前側(写真では下側)のスペースのパッドを自由に組み替えて対応可能です。このスペース、サイズが16x16cmと正方形で、かつハクバのパッド(16x15cm)とほぼ一致している事が変幻自在性を生み出す要因になっています(パッドを縦にも横にも水平にも出来ます。正方形を分割して使う様にするのはスペース設計の肝だと思います)。
一見緻密な内部設計をしたカメラバッグの方が使いやすいように思えますが、実際にはむしろ大雑把な設計に留めて、現場/状況に合わせてカメラマンに裁量権を残す方が使いやすいですね。その意味ではドンケの様なバッグの方が「設計した人が撮影現場を分っているな」という気持ちにさせます。もしどうしてもタムラックと言うのであれば625のように中判カメラ向けに内部設計されたバッグの方が仕切り区画が大きく使いやすいと思います。
※そんな事は分っていたのですが、625の出物は無いので仕方なく614を中古で入手した直後、ケンコーのアウトレットショップに625新品が中古価格で出てきたんだよね。ちょっとショック...(--; これもまたKENの運の無い人生(^^; |