Voigtränder
MACRO APO-LANTAR 125mm F2.5 SLは、EOSで使える等倍マクロレンズとして最大の口径比を持つため、圧倒的なボケ量と独特の描写で他のレンズとは違う写真をもたらしてくれます。それで私も比較的頻繁に連れ出すのですが、何度使っても使いにくい部分があります。それはピントリングの操作性。つぶやき210でも述べましたが、このレンズは正統なMFレンズとして手ごたえのあるピントリングの重みを持っている一方で、ピント操作リングはレンズの付け根の部分に20mm幅の滑りやすい金属ローレットがあるだけなので、ピント操作するバランスが悪い(手前過ぎる)事に加えて、重いリングを操作するのに力が入りにくいのです。そんな悩みを解消すべく簡単な改造を試みました。
<手持ちのレンズのピントリングのゴムを、マクロアポランターのピントリング前部に被せてみる>
マクロアポランターのピントリングを回すと、実はシルバー色のローレット部分だけではなく、(レンズが繰り出されていない短い状態の時の)レンズ先端の少し手前の部分まで一体で回転します。だからこの部分(右上の写真のピントリングのローレットと、レンズ先端のフード取り付け部分に挟まれた黒い部分)に第二のピントリングを装着すれば、操作性はとても良くなると思ったのです。で、手持の中からピントリングの大きさが近そうなレンズのゴムを外して被せてみました。最初に試したのはCanon
EF28-135mm F3.5-5.6 IS USMのズームリングですが、これは径が大きすぎて填まりませんでした。次に填めてみたのはEF70-210mm
F3.5-4.5 USMのズームリング。これは径はピッタリですが、長さが数ミリ長すぎました。写真ではまともに見えますが、ゴム側が少しはみ出しています。それにピントリングのデザインが精緻なマクロアポランターに対して少し間延びしているので、マッチングは今一つです。3番目に試したのがTamron
SP-AF90mm F2.8 Macro (72E)のピントリングです。これは径、サイズともほぼピッタリですが、デザインがやはり少し間延びしているので、EF70-210のものよりはマシとは言え、マッチングは今一つです。 |
|
本文と順序が逆ですが、左がTamron SP-AF90mm
F2.8 Macroの初代モデル(72E)のピントリングを填めた状態です。ほぼサイズはピッタリで、径も問題ありません。しかし本来のピントリング部の精緻さに対して、タムロンのゴムのデザインは少し間延びしています。
右はEF70-210mm F3.5-4.5 USMのズームリングのゴムを填めたところです。長さが少し長すぎるのと、デザインがタムロンのゴム以上に間延びしているので、マッチングは今一つですね。 |
<え、タムロンさん。売ってくれないの? (^^;>
以上のチェックの結果、タムロン90マクロのピントリングゴムを使う事にしました。しかしデザイン的に72Eの物はあまり良くないので、カタログをチェック。まずデザイン的には最新モデル272Eのピントリングデザインが一番きめ細かく精緻な印象で、マクロアポランターに似合う感じがしました。一方でレンズ外径をチェックすると72Eが71mm、次の172Eが少し太い74mm、現行の272Eが71.5mmとなっていました。外観を見る限りどのレンズもピントリング外周が最大径の様ですから、172Eモデルのピントリングは下手をすると径が大きすぎる懸念があります。ちなみにズームリングのゴムが大きすぎたEF28-135mm
F3.5-5.6 IS USMの最大径は78mmで、フード取り付け部が最大径の為、ズームリングはそれよりも少し径が小さいのです(76mmぐらい?)。以上の考察から、デザインもリング径も良さそうな最新モデルTamron
SP-AF 90mm F2.8 Di Macro (272E)に狙いを定め、ピントリングのゴムをT町からタムロンに発注しました。
....しかし、T町に電話を掛けてから数分後、A澤さんから電話があり
「タムロンは部品では出荷出来ないそうです。修理ならレンズを出してもらえば4000円ぐらいで直る様ですが」
との事。もともと修理が目的では無いし、90/2.8 Di
Macroを持っていないのでどうしようもありません。それにゴム一つに4000円は高すぎます。これで当初の目論見は早々に崩れ去りました。それでA澤さんとの電話口ですかさず
「じゃ、今度はキヤノンに聞いてみて。EF70-210mm
F3.5-4.5 USMのズームリングのゴムが取り寄せられないか、値段も併せて聞いて下さい」
と言ってみました。するとまた数分後に電話がありました。
「今度は大丈夫、出荷出来るとの事です。ただ問題があって、プラスチックのズームリング部品ごと出荷される様です。パーツリストを見ると部品としてはズームリングとゴムが一体との事。値段は2000円です。」
「え〜っ。ズームリングと一体とは言っても、ゴムは簡単に外れるよ」
「そうですよね。でも出荷出来るのはズームリングごとなので、あとはご自身で外して頂くしか.....」
私はEF70-210のズームリングのゴムも諦めて、A澤さんと話をしながら、パソコンでキヤノンのEFレンズサイトを見てレンズの径とピントリング、ズームリングの幅を片っ端からチェックしていました。それで次に白羽の矢を立てたのが、EF70-200mm
F4L USMのズームリングの方のゴムです。このレンズの最大径は76mmと少し太めですが、ズームリングは鏡筒の少し細い部分についていて、しかもリングの幅が十二分にあったからです。一方のピントリングは逆にほぼレンズ最大径の部分に付いており、幅も太くありません。ゴムを相手にする場合、径は「小は大を兼ねる」し、幅は「大は小を兼ねる」です。デザイン的にも精緻な感じが多少有って、マクロアポランターとのマッチングも悪くないと思いました。それで
「A澤さん、じゃ代わりにEF70-200mm
F4L USMのズームリングのゴムを聞いて見て下さい」
数分後にまた電話があり
「今度は大丈夫でした。ゴムだけで700円です。」
「お、安いですね。それでお願いします(^o^)/」
<EF70-200mm F4L USMのゴム到着。径が少し小さく、幅は大きすぎだけど、切って伸ばせば問題ない(笑)>
数日後にEF70-200mm F4L USMのゴムがT町に入荷しました。早速マクロアポランターに填めようとすると、径が思ったよりも小さくて填めにくかったのですが、ゴムですから少し力を込めて伸ばせば問題なく填まりました。一方幅の方は1cmほど広く、不格好になってしまいましたので、丁度良い幅に綺麗にカットしました。これで無事マクロアポランターに誂えたかのようにゴムが填まり、以前よりも良好なピントリングの操作性を得る事が出来ました。ハッキリ言って、フィーリングは全くの別物のレンズに生まれ変わりましたよ!
|
|
部品として取り寄せたEF70-200mm F4L USMのズームリングのゴムです。700円。 |
ゴムを丁度良い幅にカットしました。真っ直ぐ綺麗に切るために、ゴムが動かないようカッティングシートに貼り付けて切っています。 |
|
左がゴムをそのまま被せた状態。少し幅が広すぎました。右がゴムをカットしてから被せた状態です。誂えたような印象になったでしょ(^o^) |
|
生まれ変わったVoigtländer MACRO APO-LANTAR
125mm F2.5 SL。ピントリングの操作性は全くの別物になり、しっとりした感触で微妙な操作がとてもやりやすくなりました。カメラ&レンズを構えた時のバランスも大幅に改善され、もはや左手元の窮屈感はありません。等倍撮影ではこの様にビヨ〜ンと伸びるレンズですが、追加したピントリングのおかげで見た目のバランスも良くなりましたね。 |
この改造手法は、同じレンズ鏡筒構造を持つアポランター180mm
F4 SL Close Focusやアポランター90mm F3.5 SL Close Focusにも使えると思います。もしこれらのレンズをお持ちでピントリングの操作性に不満がある方は、ご自身のレンズを採寸して、適当なピントリングゴムを探して試してみて下さい。
<余ったゴムは>
余談ですが、幅が広すぎるためにカットして余った方のゴムを、EF28-105mm
F3.5-4.5 USMのピントリングに被せてみました。幅1cm程の小さなゴムですが、オリジナルよりも少し幅が拡がり、かつピントリングが鏡筒よりも明確に太くなったので、操作性がとても良くなりました。キヤノンのリングUSMを用いた廉価ズームレンズのピントリングって悲しいほど操作性が悪いので、お試し下さい(笑)。計算上はEF70-200mm
F4L USMのズームリングゴム一つで、4本分のゴムが調達出来ます。
|
右が余ったゴムをピントリングに被せたEF28-105mm
F3.5-4.5 USM。左は比較のためのオリジナル状態のEF20-35mm F3.5-4.5 USM。リングUSMを用いた廉価ズームレンズのピントリングは悲しいほど細く、しかも鏡筒と同じ太さになっているので操作性は良くありません。しかし幅1cmのゴムを単に上から被せるだけで、フィーリングがかなり改善します。操作時に指が鏡筒をこすらなくて良くなる事と、ピントリングがソフトになって指先の感触が改善される事が大きいです。
とは言えこのシリーズのレンズのピントリング回転感触は褒められた物ではないし、所詮1cmしか無いピントリングですから、ゴムを被せて改善しても多くを望んではダメです(笑)。しかし700円の出費で4本のレンズが小改善出来るとしたら、その費用対効果は十分にあると思います。
レンズってピントリングのフィーリングが操作性の命だなぁ、とこの改善をしてみて思いました。カメラの場合はファインダーの良し悪しが撮影フィールを最も左右しますね。 |
|