EF17-40mm F4L USM のMTFで思ったこと
KENのつぶやき vol. 285
(2008.2.3)
EF17-40mm F4L USMをEOS 30D用の標準ズーム兼、銀塩EOS用の超広角ズームとして購入しました。超広角ズームとしての使い道は新緑のブナ林など、森の情景撮影を念頭に置いての購入です。それで1月上旬に早速このレンズを連れ出して、冬の森撮影、、その出来上がったポジ画像をみて「あれれ」と思う事がありました。それは広角端での周辺部の画質。
森の情景撮影ではパンフォーカスが必要であり、ある程度絞り込んで撮影します。広角レンズの場合は周辺光量や周辺画質改善の意図もあるのでF8〜F16ぐらいが常用絞りになります。このような撮影で今まではEF20-35mm F3.5-4.5 USMがメインのレンズでしたが、EF17-40mm F4L USMは画質の評判が良いのでおおいに期待していました。しかし出来上がったポジを見ると(F8で撮影)中心部は素晴らしい画質であるものの、周辺部はSigma AF14mm F3.5というキワモノレンズを別とすれば今まであまり見た事の無い甘い画質でした。
通常であれば「個体差でハズレを引いたか?」と思うのですが、キヤノンのサイトに行ってMTF曲線を見たら、これが設計値なのだろうと納得してしまいました。デジタル時代の高性能レンズである為か、APS-CやAPS-Hでは使わない領域の性能は無視されているかのようなMTF曲線になっていたからです。今までは「MTFなど関係ない、どんなレンズでも素晴らしい写真は撮れる」と思っていましたし、現在でも変わりませんが、ここまで割り切りの良いレンズに出会うと少し考えさせられます。
ひとつの試みとして、EOS3とEF17-40mm F4L USMの17mmで撮影した画像と、メーカー公表MTF曲線を重ねて見ました。私の手持のレンズが設計値通りの性能を発揮しているとは限りませんが、見比べるとMTF曲線と実際の解像感の変化は概ね合っているように思えます。
EOS3, EF17-40mm F4L USM (17mm), F8, AE(+2.0EV, 1/40秒), E100VS
上の写真がこれからMTFとの比較でご覧頂く画像の全景。対角線上に細い枝が沢山写っているので、解像度を判断しやすいです。撮影したコマの全領域をご覧頂くために、スキャニングしたままの、黒縁のあるノートリミングで掲載しています。
先程お見せした画像を画面中心から右上と左上に向かって切り取り、それとMTF曲線を並べてみました。MTFは撮影時と同じ、17mm、F8のみを掲載しています。クリックすると大きな画像をご覧いただけます。画像は粒状性のあまり良くないE100VSで撮影したポジを、Nikon Super CoolScan 5000EDで4000DPI(2000万画素相当)でスキャニングしたままのものです。元がフィルムですしシャープネスはあまり掛けていませんので、デジタル一眼レフで撮影した時のような解像感はありませんが、解像度の変化は分かりやすいと思います。
キヤノンのサイトによれば10本/mmのMTFが0.8以上あれば高画質、0.6以上で満足出来る画質とありますが、このレンズは最周辺部で一気にゼロに向かってMTFが落ち込んでいます。また解像度を表す30本/mmのMTF(特に放射方向)を見るとAPS-Cの内側では完ぺきな特性を示す一方、APS-Hから外側では一切を捨てたような特性になっています。実際の画像を見てもAPS-Cの内側までは十二分、APS-Hの内側まではまずまず、しかしそこから外側は画質が一気に落ち込んでいますね。
このレンズは銀塩/フルサイズデジタル一眼レフでも使えるLレンズとして発売されましたが、広角端のMTFの傾向を見る限り、APS-C〜APS-Hに最適化されている様に思えます。似たような傾向のMTFを持ったレンズとして、同じF4LシリーズのEF24-105mm F4L IS USMがあります。
EF17-40mm F4L USMのMTF曲線 EF24-105mm F4L IS USMのMTF曲線
近似の焦点距離を持つ非LレンズであるEF20-35mm F3.5-4.5 USMやEF28-105mm F3.5-4.5 USMはLレンズでは無いので、画面中央部のMTF値は上記F4L兄弟に負けますが、広角端の画面周辺部は上記F4L兄弟程にはMTFが落ち込んでいません。フィルム時代のコストと性能のバランスを取ったレンズと言えるでしょう。実際これらのレンズも持っていますが、ある程度絞り込んで撮影する限りにおいて、広角端の画面周辺画質に大きな不満を持った事はありません。
EF20-35mm F3.5-4.5 USMのMTF曲線 EF28-105mm F3.5-4.5 II USMのMTF曲線* (*旧製品になりキヤノンのサイトからグラフが削除されました。)
F4L兄弟の広角端の様なレンズ性能の出し方というのは、恐らくキヤノンの中でも反省があったのか、あるいは同じLレンズでもF2.8シリーズはフルサイズ保証を念頭に置いているのか、最近発売されたEF14mm F2.8L II USMは周辺部のMTFが著しく改善されてきています。この特性は超広角レンズとは思えないです。
EF14mm F2.8L USM(旧型)のMTF曲線 EF14mm F2.8L II USM(新型)のMTF曲線
※上記MTF曲線はキヤノンのサイトへのリンクになっていますので、リンク切れになる事もあります。
キヤノンからは今後ともに新しいレンズが出てくるとは思いますが、まだまだフィルムで撮影して行くつもりの私としては、特に広角レンズにおいてF2.8Lシリーズ以外はフルサイズ保証しないような画質にはして欲しくありません。周辺部まで超高画質である必要はありませんが、F8以上に絞り込んで使った時に普通に解像して欲しいです。お願いしますよ>キヤノンさん。さもないと古くて程度の良いレンズを探し歩くようになってしまいます。
※画像を何度も見直しましたが、このレンズ、APS-Cの範囲なら惚れ惚れする画質ですね。
EF17-40mm F4L USMをF8よりも絞り込んで撮影した場合の画質チェックをしました。詳細はつぶやき288へ。
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