(続)EF17-40mm F4L USM のMTFで思ったこと
KENのつぶやき vol. 288
(2008.2.17)
今回はつぶやき285「EF17-40mm F4L USM のMTFで思ったこと」の続編ですので、以前のつぶやきをまだご覧になっていない方は、先にそちらをご一読下さい。
つぶやき285の要点は、「銀塩カメラ(=フルサイズ)で森の情景などを撮影するつもりで購入したEF17-40mm F4L USMが、17mm、F8で撮影したところ周辺画質がとても悪かった。」です。しかし折角購入したレンズですから、活用方法を確認すべく、F8よりも絞り込んだ場合の周辺画質の変化をチェックしてみましたので、その結果報告です。
EOS-3, EF17-40mm F4L USM (17mm), F22, AE(0.0EV, 1/40秒), RVP
今回ご覧頂く画像はこちらです。EOS-3とベルビアで撮影したポジを、Nikon Super CoolScan 5000EDで4000dpi(2000万画素相当)でスキャニングしました。上の画像は全体像をご覧頂くために、スキャニングしたままの廻りの黒フチまで含めて表示してあります。黄色い枠で囲った部分をこれから2000万画素ピクセル等倍相当の画像でご覧頂きます。左下部分が最周辺部で、この領域はAPS-C, APS-Hデジタル一眼レフでは使われない領域です。参考までに画面中央部から細かい枝が多く写っている部分も抜き出してみました。
以前のつぶやきにも書きましたが、フィルムをスキャニングしていますので、デジタル一眼レフで撮影した画像の様な解像感はありません。4000dpiでスキャニングしたフィルム画像を等倍鑑賞することに通常の意味はありませんが、レンズ性能の変化を見る上ではとても分かりやすいので、等倍でお見せします。解像度/解像感の絶対値ではなく相対的な変化に着目してみて下さい。
【絞り開放F4】EOS-3, EF17-40mm F4L USM (17mm), F4, AE(0.0EV, 1/1250秒), RVP
念の為に撮影した絞り開放の画像ですが、周辺部に緻密な被写体を持ってきたら全く使い物にならない画質です。APS-C(贔屓目に見てもAPS-H)で使う領域ぐらいまでがまともで、それよりも外側はまともに解像していません。大判レンズならばイメージサークルが足りていない、と思う様な画質ですね。
中央部の画質はポジをルーペで見る限りさほど気になりませんが、下の画像と比較すると多少甘いみたいです(この写真は被写界深度を少し外しているかも知れませんが、デジタルで遠景画像をチェックした時も開放の中央部はやはり少し甘かったです)。
【絞りF8】EOS-3, EF17-40mm F4L USM (17mm), F8, AE(0.0EV, 1/320秒), RVP
二段絞り込んだF8の画像です。前回つぶやきで問題にしたのはこの絞り値です。開放と比較すると格段に画質が改善していますが、それでも前回同様に最周辺部の落ち込みは激しく、森の情景などの緻密な被写体だと作品にするのは難しいです。ポジをルーペで見ていると、四隅がガラス製透明フードでケラレたか?と思うような絵になっています。
【絞りF11】EOS-3, EF17-40mm F4L USM (17mm), F11, AE(0.0EV, 1/160秒), RVP
更に一段絞り込んだF11では、ポジを4〜5倍のルーペで見ているレベルではF8で感じられた周辺部の画像の「嫌み」が殆ど消えうせて、「まあ、良いか」と思わせます。但しピントチェック用の10〜20倍ぐらいのルーペで見ると画像の甘さが残り、大伸ばしにはちょっと辛いかも、と思わせます。
【絞りF16】EOS-3, EF17-40mm F4L USM (17mm), F16, AE(0.0EV, 1/80秒), RVP
F16です。周辺画質は更に改善して、ポジをルーペでチェックしている範囲では大きな問題を感じません。勿論画面中央部ほどの画質はありませんが、主役がここに配置される事は希なので、画面全体の絵造りの足を引っ張らない画質になっています。
【絞りF22】EOS-3, EF17-40mm F4L USM (17mm), F22, AE(0.0EV, 1/40秒), RVP
F22まで絞ると、周辺部は更に改善しますが、F16との差は僅かです。逆に画面中央部の画質が多少甘くなり始めています(大きく問題にするレベルではありませんが)。
以上が簡単なテスト結果です。結論は「フィルム撮影ならF16で使え」です。このレンズのMTFグラフが絞り開放とF8の間で最周辺部の改善を殆ど見せていないので、更に絞り込んでもダメか?と恐れていましたが、結果はF16で使える事が分って良かったです。
参考までに同時にEOS 30Dも持ち出してAPS-Cの範囲内の画質をチェックしたところ、焦点距離に依らず周辺部の画質はF11〜F16ぐらいが最良。一方の中央部の画質はF5.6〜F8ぐらいが最良ですが、F11〜F16での落ち込みも僅かなので、画面全体のバランスを考えるとF11での使用が最も良い絵をもたらす結果となりました。(但しフルサイズとは違ってAPS-Cの場合は開放でも余り問題とはならない高画質です。)
風景撮影では「フィルムはF16、APS-CはF11」を合言葉に、このレンズにはフィルム、デジタル両面で活躍してもらいましょう。
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