マウントアダプターを使ったレンズのEOS露出チェック
KENのつぶやき vol. 287
(2008.2.11)
マウントアダプターを使ってEFマウント以外のレンズをEOSに装着すると、電子接点が無く、レンズ情報が正しくボディに伝わりませんので露出が暴れます。その話題については過去のつぶやきで何度か採り上げました。今回はその続編なので、もしまだ過去のつぶやきを読んでおられない方は、必要に応じてそちらも目を通して下さい。
マウントアダプターを使った場合のEOS露出テスト(つぶやき247)
マウントアダプターでEOSの露出が暴れる理由(つぶやき248)
禁断のスーパープレシジョンマットEc-Sを使う(つぶやき252)
EOS 30D
APS-Cデジタル一眼レフはフィルムカメラと比べてミラーボックスやミラーが小さく、またスクリーンも多少特性の異るプレシジョンマットが装着されているので、以前テストしたEOS-3とは異る特性を持っていると思われます。それゆえ我が家にEOS 30Dがやって来てから「テストしなくては」と思っていましたが、多忙で伸び伸びになっていました。
具体的なテスト方法はマウントアダプターを使った場合のEOS露出テスト(つぶやき247)に掲載してある通り、均質に照明された部屋の白壁の露出を計ります。測光モードは一応全部チェックしましたが、殆ど差が出なかったので評価測光モードのみ記載しています。今回のテストでは露出リファレンス用に電子接点のあるEF50mm F1.4USMとTamron SP-AF90mm F2.8 Macroを、マウントアダプターを使ったレンズにはCarl Zeiss Planer 85mm F1.4 MMJを用いました。過去のテストから露出の暴れは原理的にレンズの焦点距離には依らず、測光時の絞り値のみに依存する事が分っていますので、手持レンズの中で最も開放値の大きなPlaner 85mm F1.4 MMJで絞り値を変化させれば、実用範囲の全ての絞り値テストが出来るからです。
以下がEOS 30Dのテスト結果です。左端が絞り値、各レンズの値は測定されたシャッタースピード(逆数表示、0.3秒からは"を付けて秒表示)、「必要補正量」は露出のズレではなく、それから逆算される各絞り値で基準露出と同じにするのに必要な露出補正量です。以前のつぶやきでは露出のズレで表示していましたのでプラスマイナスが逆になっています。お気をつけ下さい。(撮影現場で必要な情報は露出補正量なのでこちらの表記に変えました)
この結果はちょっとビックリしました。過去にテストしたEOS-3の結果から想像される物とは全く異ったからです。後でEOS-3の結果ももう一度お見せしますが、EOS-3の場合はF1.4とF2の領域で露出がオーバーに振れる為にマイナス補正が必要でしたが、EOS 30Dの場合はF2でむしろ+1EVのプラス補正が必要になっています。それ以外にも絞りによって露出が大暴れしていて、一枚必撮的な撮影では苦労しそうな露出特性です。この特性からするとマウントアダプターを使ったレンズによる撮影の場合は、その場で絞り値をあれこれ変化させるスタイルではなく、あらかじめ絞り値を決めてテスト撮影し、露出補正値を決めてから撮影に臨んだ方が良いと思います。
なお、この特性は最近出回っている電子接点付きのマウントアダプターを用いた場合とは異る筈です。では電子接点付きのアダプターであれば露出が安定するかといえば、原理的にははやり暴れる筈です。あれはカメラボディ側を騙して実際の絞り値に関係なくF2とかF1.8という情報を送るので、カメラは常にその開放絞り値に相当する補正を掛けてしまいます。一方のカメラ内部の生(補正前)の測光値は測光時の実際の絞り値に応じて暴れるので、暴れが一定方向にシフトするだけでしょう。ただアダプターがカメラに伝える絞り値で撮影すれば露出は一致するような気がします。電子接点付きのアダプターをお持ちの方は試してみて下さい。
EOS 40Dからはファインダースクリーン交換が可能になり、レーザーマットやプレシジョンマットの様な拡散特性の高いスクリーンが使えるようになりました。EOS-3でのテスト結果によれば、これらスクリーンは測光時の実絞り値が変わっても安定した測光値を返すので、APS-Cデジタル一眼レフであっても上記の様な露出の暴れが相当に緩和されると予想されます。40Dをお持ちの方はテストしてみて下さい。
EOS-3
次はEOS-3です。EOS-3は過去に散々テストしているのですが、読者の方から今は絶版となったブライトレーザーマットスクリーン(Ec-K)を譲って頂いたので、そのテストを兼ねて、EOS-3に装着可能な全ファインダースクリーンタイプでのテストを再度行いました。
まずはレーザーマットスクリーン(方眼タイプ等)を装着した場合です。カスタムファンクション0(スクリーン特性)は当然レーザーマット用にしてあります。マウントアダプターを使う場合、EOS-3やEOS-1系ならこの組み合わせが一番のお勧めです。データをご覧になれば分るように露出で注意するのはF2よりも明るい状況だけで、それよりも絞り込んだ側では露出が見事に安定しています。この様な特性を示す理由はマウントアダプターでEOSの露出が暴れる理由(つぶやき248)を御覧下さい。
次に、正規にスーパープレシジョンマットに対応していないカメラに無理やりスーパープレシジョンマットEc-Sを付けた場合です。Ec-Sは拡散特性が極めて高く、露出の暴れは殆ど起きませんが、ファインダーが暗くなるので測光値がオーバーに振れる為に、概ね0.3EVから0.5EVぐらいのマイナス補正が必要になります。EFマウントレンズでもマイナス補正が必要で、マウントアダプターを付けたレンズの場合には、上記レーザーマットの場合に0.3〜0.5EVのマイナス補正を加えた物になっています。
EFマウントレンズのデーターが少数しかないのは、電子マウントのあるレンズの場合は撮影絞り値に依らず開放絞り値でのみ測光し、カメラ表示値はカメラ内部で演算して求めています。だから絞り値ごとの露出の誤差を計るためには異る開放値を持つEFマウントレンズを複数用意して測定しなければならないからです。
なおスクリーン特性カスタムファンクションをニューレーザーマット用にすると露出の暴れが大きくなりますので、レーザーマット用を使う事をお勧めします。
詳細は禁断のスーパープレシジョンマットEc-Sを使う(つぶやき252)を御覧下さい。
EOS-3標準装備のニューレーザーマットを使う場合です。このスクリーンは明るさを重視していて拡散特性が悪く、光軸からオフセットした露出センサーへの光の入り具合が絞り値によって大きく変化します。結果的に電子接点の無いレンズを使うと露出が大暴れします。レーザーマットスクリーンは高価なものではありませんし、ピントの山が分かりやすくなりMFが楽になりますので、EOS-3をお使いの方はレーザーマットへの交換をお勧めします。
今回の測定結果は以前のマウントアダプターでEOSの露出が暴れる理由(つぶやき248)での測定結果と多少の誤差がありますが、傾向は一致しています。
最後は廃盤となったブライトレーザーマット(Ec-K)です。このスクリーンは明るさを最重視しているのでピントの山が分かりにくく、またマウントアダプターを使った場合に露出の暴れが更に酷くなる事が予想されます。スクリーン特性が明確に異るにも関わらず、スクリーン特性カスタムファンクションの無いEOS-1N, 1N RS時代の商品なので、EFレンズで使った場合の露出の暴れも気になります。なおキヤノン・サポートによればEOS-3やEOS-1Vで使う場合にはカスタムファンクションをニューレーザーマット用にして下さいとの事でした。
結果は上記の通りです。EFマウントレンズを二本しかテストしませんでしたが、その範囲ではニューレーザーマットと同じ測光値を返していて、キヤノン・サポートの指示通りになっています。ただPlaner 85mm F1.4の測定値を見ると、F1.4〜F4の間ではニューレーザーマットの測定値と見事に一致している一方で、F5.6では0.3〜0.7EVの違いが出ているので、F値の暗いEFマウントレンズを使うと露出誤差が出るかも知れません。
このスクリーン、一見露出の暴れが大きいように見えますが、全域0.7EVプラス補正を原則とすると、露出の安定しているレーザーマットに似てF1.4とF2でマイナス側への露出補正に注意すれば良く、結構使いやすいですね。何故こうなるのかはミステリーです(笑)。
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