ストロボ天井バウンス用リフレクターを安価に作る
KENのつぶやき vol. 294
(2008.7.28)
結婚式の披露宴など、ストロボ天井バウンス撮影出来る場所で役に立ちそうなストロボリフレクターを安価に作りましたので、ご紹介します。
今回は色々と試行錯誤がありまして、全部書いたら長くなりましたので二部構成に分けまして、第一部で作った物とその効果の説明。第二部で紆余曲折も含めた作り方の説明をします。コストは最終品だけを作るなら300〜400円で2〜3個作れます。
【第一部】ストロボリフレクターの紹介
リフレクター製作のきっかけ
リフレクターを作る発端となったのは6月にあった結婚式です。披露宴で写真を撮るべく色々と準備していましたが、挙式日の直前にABetterBounceCard.comという英語のサイトを見つけました。そこには発光部を天井に向けたストロボに、白い紙か薄いプラスチックシートで作った大きめのウチワの様な反射板(A Better Bounce Card)を付けることで、表情豊かなポートレート写真が撮れる、と紹介されていました。生憎結婚式まで時間が無くて、A Better Bounce Cardの準備もテストも出来ませんでした。
結婚式に行くと、真っ先に私の目を釘付けにしたのは、新郎でも新婦でも無くて、式場のプロカメラマンの皆さん(二名居られました)が全員使っていたリフレクターです。それはA Better Bounce Cardと同じ原理、ほぼ同じサイズで、しかし装着方法が違っていました。A Better Bounce Cardはテープか何かでストロボに固定してしまい、脱着出来そうにありませんが、式場のプロカメラマンが用いていたカードは、ストロボ発光部の周りにベルクロ(マジックテープ)を貼り付けて、リフレクター側にもベルクロを付けて簡単に脱着出来るようにしていました。縦位置バウンス撮影する場合、リフレクターを付ける場所を変更しなければ意味が無くなりますので、この構造は理に叶っています。
私自身は効果の程を確認出来ていませんが、「お金を貰って、一生に一度の撮り直しの利かない写真を撮る」結婚式場の複数のプロが使っていますので、当然テスト撮影を繰り返して大きさや向きを決めている筈ですし、A Better Bounce Cardともほぼ同じ大きさなので、同様な物を作れば良い効果が期待出来そうです。実は8月にも結婚式がありますので、急遽同じ物を作る事にしました。
いきなりですが、リフレクターの完成品の紹介です
右上の写真にある式場のプロが使っていたリフレクターのサイズは、SPEEDLITE 580EXのサイズから逆算すると18cmx18cmの正方形から変形ホームベース状に切り出した大きさになっていました。そこで私が作ったのが下の写真です。
左が式場のプロが使っていた物とほぼ同じ反射面を持つリフレクターです。右は端切れで作った小サイズのリフレクターで、目にキャッチライトを入れる目的ならこちらでも大丈夫そうです。材料は1mm厚のPP(ポリプロピレン)発泡シートです。当初は私もベルクロで装着する物を作りましたが、紆余曲折の結果、20mm幅のゴムベルトで固定する方式に変更しました。その理由は後で説明します。左のリフレクターのゴムベルトの回し方が、右の様な単純では無いところがミソです。
リフレクターの装着状態です。左が横位置バウンス撮影状態、右が縦位置バウンス撮影状態です。縦位置の場合には装着位置を90度変えて、ストロボ発光部の短辺側に付けなければなりませんが、ゴムベルトで付けているだけなので、簡単に回転出来ます。
小サイズのリフレクターで、装着方法は同じです。下のテスト結果によれば、小物撮影などの近距離ならこのサイズで十分な効果を発揮します。
同様の物がオリンパスから2625円で出ていますが(リフレクターアダプター FLRA-1)、写真のリフレクターだけを作るなら、コスト210円(ダイソー製PP発泡シート+ゴムヒモ)で8〜10個作れます。キヤノンの580EX / 580EX IIやニコンのSB-800には同様のキャッチライトパネルが内蔵されていますが、縦位置バウンスでは使えませんので、一つ持っておくと便利だと思います。
簡易テスト結果
では簡易テスト撮影結果をお見せしましょう。本来であればモデルを伴って結婚式場の様な会場に行きテスト撮影すべきなのですが、風景&マクロ専門の私にはちょっと無理なので、狭い室内で小さな置物を使ったテストになっている事をご承知下さい。ストロボから被写体までの距離が1mしか確保出来ず、また被写体から後の壁まで15cm程度と、条件の厳しいテストになっています。結婚式などの撮影に比べると距離が近過ぎますので、リフレクターの効果が大きくなっています。このテスト結果で大切なのは、撮影方法とリフレクターの大きさの違いによる写真の傾向の違いです。なお、背景の影の出方が分かりやすいように、ストロボはカメラから離して左側に設置しています。
左上はストロボ直射です。予期した通り被写体の表面のテカリと、背後の影の出方が強烈です。
右上は天井バウンス撮影です。室内に色々な色の物が置いてあるので色カブリしています。バウンス撮影では背後の影が消えて柔らかな描写になりますが、鼻やあごの下(この置物だとあごの下)に影が出来る傾向があり、目のキャッチライトも少なめで、人の表情を暗くしてしまいます。
左下が小サイズのリフレクターを使った写真です。近距離での撮影ならばこのサイズでも十分の様ですね。単純な天井バウンスと比較すると、天井とリフレクターからの二つの光のミックスになり、あごの下の影が消えて、キャッチライトも増えて、犬の置物が魅力的な表情になっていると思います。代わりに背後に柔らかな影が出ています。実際の結婚式では撮影距離がもっと長いので、このサイズではリフレクター側の光量が不足するでしょう。
右下が大きい方のリフレクターを使った写真です。リフレクターからの光が更に増えて、置物の表情が更に明るくなっています。あごの下の影も完全に消えていますね。全体的に見てリフレクターからの光が勝ち過ぎていますが、撮影距離が近過ぎる為で、実際の撮影ではこれぐらいのサイズで丁度良いと思われます。背後の影も濃くなっていますが、実際には壁との距離がもっと取れますので、和らぐ筈です。
やはりこのリフレクターがひとつあると、より明るく豊かな表情の新郎新婦の写真を撮ることが出来そうです。
【第二部】ストロボリフレクターの作り方、紆余曲折編
第一世代(ベルクロ装着);フラフラしすぎてボツ
先ずは100円ショップのダイソーに行って材料を仕入れてきました。それが左の写真で、1mm厚のPP発泡シート・B4サイズ、粘着テープ付きのベルクロテープ(白)、そして両面ベルクロになっていて、釣り竿などを束ねるのに使うピタッとバンドです。値段はもちろん合計315円。なおPP発泡シートは切って使いますので、大は小を兼ねるという事でA3サイズを買われた方が良いかも知れません。値段は一緒です。
そして最初に作ったリフレクター群が右の写真です。当初は大小様々な大きさの物を作って、効果測定しながら使い分けようかと思っていました。三つ目の大きさの物が結婚式場のプロが使っていたものと同じ大きさの物です。これは最終的にボツになりました。二つ目の大きさの物が小サイズのリフレクターとして生き残り、一番大きなサイズの物は、最終品として再度カッティング加工されたので、このスタイル/大きさでは生き残りませんでした。
早速ストロボに装着してみました。装着方法はピタッとバンドを発光部の周りに巻き付けて、そこにリフレクターをベルクロで貼り付けます。ところがこれでは取り付け部の剛性が不足して、リフレクターがフラフラします。上の写真で分るように自重だけでもこれだけ向きが動いてしまい、カメラに取り付けて振り回すとリフレクター板その物もしなりますので、この状態だと本当にカメラの上でウチワで煽いでいる様で格好悪いです。それに反射光の光量や向きが安定せずに、失敗をもたらすかも知れません。
ストロボ側をピタッとバンド巻き付けではなくて、粘着テープ付きのベルクロを貼り付ければフラフラ感は半減しますが、それでも格好悪いですね。思い返せば結婚式場のプロが使っていたリフレクターも、随分とフラフラ揺れていて気になっていました。という事でこれは早々にボツ、、、新たな方策をダイソーやホームセンター巡りをして考えました。
第二世代(ゴム付きベルクロバンド装着);脱着が面倒でボツ
次に買ってきたのが、ゴム付きのベルクロを用いたバンドで、用途は釣り竿やテニスラケットなどを束ねる物です。価格は420円でした。フラフラ防止という点でこのバンドの効果は絶大でした。ゴムが一部にしか使われていない為、ゴムの位置をリフレクターから離して取り付けると、リフレクターを固定している部分のバンドに伸縮性が無い上に、ゴムの効果でピッタリと密着していますので、取り付け部のフラフラ感はほぼゼロになりました。但しリフレクターその物は薄い板なので、カメラを動かすと多少ウチワの様にしなります。
これが取り付け状態ですが、難点がありました。リフレクターの脱着や向きの変更がワンタッチではなく、両手を使って格闘しなければならないのです。バンドはあらかじめ長さを調節してリフレクターに装着し、ゴム部分を伸ばしながらバンドをストロボ発光部に被せる作業になるのですが、そのゴムの長さが少ないので余り伸びずにやりにくいこと、、、、、まあ、最悪使えなくは無いので、他にもっと良いアイデアが浮かばなければこれで結婚式に臨むつもりでした。
第三世代(ゴムベルト+しなり装着);取り付け簡単、フラフラ感ゼロで採用!
次に買ってきたのは、20mm幅の黒いゴムベルトです(写真はありません)。スカートのウェスト部などに入れるもので、手芸洋品店で売っていて、20mm x 800mmの物で290円でした。上記のリフレクターに、そのゴムベルトを付けてみましたが、装着はワンタッチになったものの、取り付け部が柔らかいゴムですから簡単にリフレクターがフワフワしてしまい、第一世代のベルクロ装着の時よりも却って悪化してしまいました。次に、ゴムベルトの回し方を変えて、リフレクターの最外側からストロボ発光部に被せてみました。すると、劇的な改善!!
私はその状態を子細に観測し、更なる改善アイデアを織り込んで、最終品を頭の中で設計し、そして余っていたもう一枚の大きめのリフレクターをカットして製作しました。
まずは上の写真で最終品を説明したいと思います。ゴムベルトはストロボ発光部よりも広い位置から発光部を抱えに行きます。こうするとリフレクター全体が僅かに弓形に湾曲するので、ペラペラの薄いシートに剛性が加わり、縦方向に対するしなりをほぼ完全に抑止出来ます。左の写真を見れば、リフレクターが僅かに湾曲しているのが分りますね。
次に取り付け部ですが、ゴムベルトの位置から更に下方にリフレクターを延長して、リフレクターを動かす力の支点(リフレクターとストロボが接する最下点)と作用点(ゴムベルトの位置)を引き離し、テコの原理であまり強くないゴムの力でも、リフレクター自体がゴムの伸びで動く事をほぼ完全に無くす事が出来ました。
板のしなりとテコの原理を用いていますので、ゴムそのものは余りきつくする必要が無く、取り付けや、向きの変更はワンタッチで出来ます。
なお、小サイズのリフレクターであれば軽くて小さいので、このような工夫は不要です。単純なゴムベルトの回し方で何ら問題はありませんでした。
これがリフレクターの図面です。ゴムを入れる穴の内側寸法(4cm)は、スピードライト550EXの発光部側面(短辺)寸法に合わせてあり、また最外側寸法(この場合は10cm)は発光部長辺側の寸法+2cm程度(2.5cm)にしています。皆さんが作られる時には、お持ちのストロボの寸法に合わせて適宜変更して下さい。ゴムベルトは適切な長さに切ってから穴に通して、糸で縫って環状にします。またカットしたPP発泡シートは角を爪切りで丸く切り落としておくと痛い思いをしなくて済みます。
改めて完成図です。このリフレクターはカメラを振り回しても全くフラフラすることなく、あたかもネジ留めした剛体板であるかの様な振る舞いをします(但し横方向のショックには多少弱いです)。それでいて取り付け、取り外し、向きの変更はワンタッチです。
最後に、調度品撮影などの近接撮影時に結婚式場のプロが使っていたテクニックをご紹介しましょう。左の写真がその状態ですが、リフレクターを前側に付けて撮影していました。こうすると天井バウンスをしながら、リフレクターを透過してデフューズされた光を前方から手元に落としているので、光が満遍なく回り込んだ撮影が出来る、、と想像出来ます。
右の写真は私が考えた更なるマクロ撮影時の使い方ですが、天井バウンスを放棄して(あるいは天井バウンスが使えない場所では)、デフューズされた光だけを至近距離に落とす使い方も面白いかも知れません。その内にテストしてみます。
続編「ストロボ天井バウンス用リフレクターの効果報告」
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