ストロボ天井バウンス用リフレクターの効果報告
KENのつぶやき vol. 296
(2008.8.9、改訂2011.5.3)
つぶやきvol.294に掲載した、300〜400円ぐらいの材料費で作成したストロボリフレクターを使って、結婚式の披露宴で撮影してきました。リフレクターの効果は大きかったので、今回はその報告をしましょう。
これが用いたリフレクターです。作成に至った経緯や作り方についてはつぶやきvol.294を読んで下さい。これからリフレクターの効果を説明する上でのポイントは、天井バウンスの際に、ストロボ光の一部を白い反射板で反射させて被写体側に向かわせる構造である事と、横位置撮影ならレンズの真上にあるリフレクターが縦位置撮影ではレンズの横に来る事です。
リフレクターの効果と横位置/縦位置の違い
先ずお見せするのは、ストロボリフレクターを使って撮影した横位置と縦位置の写真から切り出した画像です。良く見れば、あごや鼻の下の影が殆ど目立たない点や、頬の頂点に柔らかなハイライトが入るあたりにリフレクターの効果が伺えます。またお見せ出来ていませんが、目に入るキャッチライトが、キャッチライトパネルを用いた場合の針で刺した様な小さな物ではなく、もう少し大きめの存在感のある物が入りますので、より自然な表情になっています。もちろんスタジオ撮影でアンブレラやソフトボックスを用いた際の様な大きな物ではありませんが、、
横位置と縦位置の大きな違いは被写体の背後に出来る影です。横位置撮影の場合にリフレクターはレンズの真上にありますので、影は被写体の真後ろやや下側に出来上がります。人間の上半身は下の方が広めになっていますので、この影は多くの場合において見えません。左側の写真では新婦の胸元のリボンの右下に薄い影が出来ていますが、これぐらいですね。
一方縦位置撮影の場合、私はシャッターボタンを上にして構えるのでストロボがレンズの左側に来ます。結果として被写体の右側に影が出来上がります。天井バウンス光にリフレクターからの反射光をミックスしているので、ストロボを直射した場合とは違って出来上がる影は薄く柔らかいものですが、被写体の状況によっては気になるかも知れません。右の写真では新婦の顔の前(右後)に影が出てしまっています。被写体と背後の壁までの距離が近いと影は濃くなり、2〜3m離れると殆ど気にならなくなります。
リフレクター有無の比較
今回偶然にも、同じ会社の人が私と全く同じ機材(EOS 30D, EF28-135IS, 550EX)を持ってきて撮影しました。その写真を借用してきましたので、同じ状況でのリフレクター無しと有りの写真を並べて比較してみましょう。以下の写真はいずれも左がリフレクター無し(会社の人の写真からの切り出し)、右がリフレクター有り(私の写真からの切り出し)です。会社の人の写真は同じような明るさ、色味になるようにレタッチしています。
ウェディングケーキカットの時の写真(部分切り出し)で、左が天井バウンスのみ、右が天井バウンス+リフレクターです。どちらの写真の「写り味」がお好みでしょうか?
違いが分かりやすいように、新婦を大きく切り出してみました。鼻の下、あごの下、髪の毛の下、リボンの下あたりの影の出方と、頬のハイライトの入り方に違いがありますね。単純な天井バウンスだとどうしても影が出来ますが、リフレクターを用いるとそれらが目立たなくなります。また天井バウンスだけでは目にキャッチライトが入りませんが、リフレクターを用いた方はキャッチライトがしっかり入っています(お見せ出来ていません)。その代わりにリフレクターを用いた方は、新婦の右後に淡い影が出来ています。
これは夜の屋外で、どちらも縦位置で撮影したものです。屋外では天井バウンス出来ませんので、普通はストロボ直射モードにせざるを得ません。左は会社の人がストロボ直射で撮影した物で、何とリフレクターを付けて撮影している私が写っています。私の右側には真っ黒な影が伸びていますね。画面中央で立って撮影しているカメラマンの影が、奥にある部屋の壁にまで達している点にも注目して下さい。
右の写真は私が屋外にも関わらずバウンス撮影したものです。空に向かってストロボ発光していますので、実態としてリフレクターからの反射光のみで撮影したものです。ストロボ直射した場合とは違って、光が柔らかいので新婦のドレスや肌の質感が残っています。また新婦の右側に影が出来ていますが、それはあまり固い物ではなく、また遠くに行くに従って目立たなくなっていますね。今回はリフレクターを垂直に立てたままなのでストロボ光量ロスが大きいですが、リフレクターを45度前傾出来るように工夫を加えると、同様の写真を少ない光量ロスで(=ストロボチャージ時間を短く保って)撮影出来る筈です。
これは参考までに、もう一枚上の写真に写っている私が撮影したカットです。夜空バウンス+リフレクターによる撮影で、横位置撮影なので影が目立たない点に注目して下さい。屋上から伸びるテープの影も柔らかいために、もう一枚上の写真のテープ部分と比較すると線が細いかのように見えますね。この様に、ストロボ天井バウンス用のリフレクターは、天井が無い場所でも結構役に立ちます。
以上の様に、ストロボ天井バウンス用リフレクターは安価、簡単に作る事ができて効果は大きいと思います。近似の効果を狙うオムニバウンス+45度上向き発光とは違って、バウンス光(天井等に向けて発射する光)の光量ロスが無いのも肝で、天井高が比較的高い所でもバウンス効果が得られました。
縦位置撮影時の影を消す サンダース・ストロボフリップVH-2000 (2011.5.3改訂)
縦位置撮影で影が出てしまうのは、リフレクターがレンズの横に来てしまうからです。ならば縦位置撮影でも横位置撮影でも常にリフレクターがレンズの真上に来るようにすれば良い筈です...... それを実現出来る機材として「ケンコー・クイックフィックサーII」を以前紹介しましたが、これは余りにも大げさで、縦横切り替え時の操作箇所が多く、安定性も悪くて扱い難い!
こんなもの結婚式に持って行けないな〜と悩みつつ、1年以上掛けて良い機材を探してきました。
それがサンダース・ストロボフリップVH-2000。以前は銀一やカメラのミツバが輸入販売していましたが、残念ながら既に国内販売は終了しており、中古をオークション等で気長に探すか、米国から個人輸入をしないと入手出来ません。
縦横切り替えはワンタッチで、ご覧の通り調整を正しくしておけば、縦位置でもレンズの真上にストロボが来ます。これで一度結婚式で撮影しましたが、縦位置撮影での影の悩みは完全に解消されました。
また縦位置撮影時にシャッターボタンを上にして構える様になるのが個人的に嬉しい点で、他のストロボブラケットでは得難い特徴です。昔のマニュアルカメラはシャッターボタンがボディ軍艦部真上にあり、その頃は私もシャッターボタンを下に構えて縦位置撮影しましたが(親指でシャッターボタンを押します)、AF時代になってシャッターボタンがグリップ側に移設されて斜めに付いている現状では親指シャッターが使えず、横位置と同じ様にグリップを持つことになるので、シャッターボタンが下では手首が痛くなります(=正確に垂直線を出し難くなります)。
これが使用時の機材全景。クイックフィクサーほどでは無いにしても、実際の結婚式会場では大げさで目立ってしまう機材です。またストロボフリップの一つの欠点として、支柱がレンズの直ぐ脇にあるので鏡筒の径の大きなレンズは使えません。
またこの機材は買ってきて直ぐに使えるインスタントな機材ではなく、自分の機材に併せてチューニングする必要があります。カメラ背面にボタンや液晶の無いフィルムカメラの時代に設計された機材なので、デジタル一眼レフに用いるとスイッチや液晶画面とアンチツィストプレートが干渉して操作不能になったり、傷が付いたりします。それに標準のメタルプレートだけだとカメラがどうしても滑って回転してしまうために、オプションのコルクプレートを貼り付けたり、別の方法を考えたりしなければなりません。
私はEOS 30Dに合わせてアンチツィストプレートを削ってスイッチとの干渉を無くし、滑り止めにゴムの薄板を貼り付けました。
この機材はアメリカ製なので、ボルトナット類がインチサイズになっています。縦位置でレンズの真上に正しくストロボを配置したり、カメラ側にバッテリーパックを付けたりした場合にはブラケットの支柱の高さを調節します。また可動部の節度やガタを調整するにもリンク部のネジを締めたり緩めたりしなければなりません。それにミリサイズのレンチを使うと簡単にナットの頭を舐めてしまいますので、インチサイズのボックスレンチが必要です。ダイソーで105円で売っています。
この機材は作りが華奢で、ガタがあるという評判が多いですし、それが原因でストロボを破損したとか言う記事を読んだこともあります。この機材を入手した直後は私も同感でしたが、インチサイズのボックスレンチを入手して各部をきちんと調整したところ、気になるようなガタも無く快適に使えるようになりました。
戻る
|