ホースマン・ロールフィルムホルダー
KENのつぶやき vol. 297
(2008.8.31)
ホースマンのロールフィルムホルダー612型を入手しました。新品購入なので取り扱い説明書がありましたが、興味があってネットを検索したところ、このロールフィルムホルダーの使用方法を説明したページを見つける事が出来ませんでした。取説を読むと知らなければ上手く扱えない部分が少なからずありまして、中古入手で困る人も居られると思うので、私の備忘録も兼ねて取り扱い方法をつぶやきとして書く事にしました。ホースマンの現行型ロールフィルムホルダーは全て同じ基本構造なので、612型以外のモデルでも取り扱い方法は下記の通りです。
外観
外観から見た構造はシンプルです。ホルダー上面に巻上げレバーとフィルムカウンターがあり、更にフィルム巻上げロック解除ボタンがあります。ホルダー側面には裏蓋開閉ボタンがありますが、これは押し込みながらO方向(写真右側)にスライドすることで裏蓋が開きます。また閉じるときにはこのボタンを手でL方向に戻す必要があります。トヨのロールフィルムホルダーとは異り、引き蓋のロック機構はありません(何かに引っ掛かって開かないか、不安です)。
内部構造
上段の写真が裏蓋を開けた状態です。フィルムを装填する部分は中枠になっていて、取り外してフィルム装填します。下段の写真が中枠ですが、向かって左側が送り出し側で、こちらにフィルムを装填します。多分このホルダーで知らなければ一番理解し難いであろう構造が、スタートマーク位置で、プレッシャープレートに開いている丸穴です。「Start」の様な記載はありません。
参考までに、この中枠は逆さまにもセット出来ます。その場合はフィルム巻上げレバーが左下になり、フィルムカウンターも真下に来てしまいます。
フィルム装填(その1)
1.空スプールを右側のスプール受けに取り付けてから、左側のスプール受けにフィルムを装着します。
2.フィルムは左下側から裏紙が出るように取り付けます。
3.プレッシャープレート側を経由して、右側のスプールに裏紙先端を巻き付けます。
4.そして丸窓にスタートマークの矢印が出るまで巻上げます。ゆっくり巻上げないと矢印が一瞬で丸窓を通過してしまうので要注意です。
フィルム装填(その2)&撮影
(上段の写真)スタートマークまで巻上げた状態で、中枠をフィルムホルダーに戻し、裏蓋を閉めます。この時裏蓋開閉ボタンを手でL側に戻す必要があります。そして巻上げロック解除レバーには触らずにそのまま巻上げると、自動的に1コマ目で止まります。
(中段左の写真)撮影時には引き蓋を完全に引き抜きます。この引き蓋にはロック機構は無く、またマーキングも無いので、完全に引き抜かないと引き蓋が画面に掛かってしまう恐れがあります。但しマジックか何かで丁度良い位置にマーキングすれば引き蓋をホルダー側に残した撮影は可能です。
(中段右の写真)撮影後は、巻上げロック解除レバーを一回操作して、手を放してから巻上げると、次のコマのところで自動的に止まりますので、撮影を繰り返します。規定枚数の撮影が終わると、際限なく巻上げられるようになりますので、手応えが無くなるまで巻上げます。
(下段の写真)そして裏蓋を開けて、撮影後のフィルムを取り出します。
トヨのロールフィルムホルダーとの比較
トヨとホースマンのロールフィルムホルダーは造りも操作も異り、両方使うと間違えそうです。そこで両者の違いを少しまとめておこうと思います。なおトヨの取り扱い方法はつぶやき194をご覧下さい。
【構造や材質】
トヨのホルダーは一部分を除きジュラルミンを初めとする金属製で、全体的にカッチリとした造りになっています。一番精度が要求されそうなグラフロック(4x5国際規格)取り付け部のプレートも分厚い無垢のジュラルミンで造られています。このホルダーの最大の設計意図は、大判カメラのピントグラスを外さずに装着しそのまま撮影操作が出来る事なので、挿入部分の厚みが薄い代わりに、フィルム巻上げ部がピントグラスの外側になるよう造ってあります。その結果、全体の横幅が長くなり、単体サイズはホースマンのホルダーよりもかなり大型で重くなっています。
一方のホースマンのホルダーですが、ホースマンのカメラボディの中にファインダーを持ったものがあり(ホースマン960/970/980/985/VH-Rや、SW612など)、それらのカメラに装着して使いやすいように、全幅がカメラからはみ出ないようなサイズに造ってあります。その結果フィルムは内部で二度Uターンする構造になり、ホルダー全体の厚みがあるので、ピントグラスを外せないタチハラや旧型トヨフィールドなどでは原則として使えませんし、それ以外のカメラでも装着にはピントグラスを外す必要があります。また主要部分以外はプラスチック製で、精度が要求されそうなグラフロック取り付け部のプレートもプラスチックでした。その代わりにホルダー単体はトヨに比べると軽量コンパクトです。
上下に並べた上のホルダーがトヨの45/69ロールフィルムホルダーで、白い矢印をつけた板以外は基本的に全て金属製です。白い矢印の部分はピントグラスを外さずにホルダーを装填したときに、ピントグラス、ホルダー裏蓋双方の傷つきを防止する為の保護板で、擦れても傷の目立たないプラスチックで出来ています。フィルムは長いフィルム室を左から右に真っ直ぐ送られて、あまり負担の掛からない構造になっています。
下がホースマンで、中枠、グラフロック取り付け部の大きなプレート共にプラスチック製です。金属部品は裏蓋、プレッシャープレート、引き蓋、フィルム押さえ板、及び中枠の骨組み部分程度です。フィルムは幅の狭いフィルム室内で二度Uターンをします。
【操作方法の違い】
トヨとホースマンのホルダーを両方所有していて迷うのは、フィルム装填後の最初の巻上げ操作です。トヨの場合は巻止め解除ボタンを操作してから巻上げなければなりません。これをしないとフィルムが空送りされてしまって規定枚数撮影出来なくなりますし、最悪フィルムエンドまで巻上げられてしまいます。
一方のホースマンは巻上げロック解除レバーを操作せずに巻き上げて最初のコマまでフィルムを送るようになっています。しかし試してみところ、仮に解除レバーを操作してから巻き上げても実害は無く、きちんと1コマ目まで巻き上げられましたので、混乱を避ける為に「裏蓋閉めたら解除レバー操作」と覚えても良いかも知れません。
それ以外で気になるのは引き蓋の操作方法です。トヨにはロックレバーがあり、不用意に開く心配がありませんし、全開位置で再度ロックがかかり、引き蓋を完全に引き抜く必要がありません。
一方のホースマンにはロック機構が何も無く、デフォルトでは完全に引き抜いて撮影するようになっています。これもファインダーを持ったカメラでの操作を考えているのかも知れません(これらのカメラでは、フィルムホルダーを外さなければ引き蓋を閉めずとも使えます。普通のカメラに引き蓋が無いのと同じです)。但し引き蓋の動きを子細に見れば、完全に抜き取る手前に、画面に掛からず、引き蓋からの光線漏れの心配も無い位置がありますので、引き蓋側にマーキングを加えて引き抜く位置を決めれば、完全に抜き取らなくても撮影出来そうです。
なお、フィルム装填時、裏蓋を閉めたら引き蓋が完全に閉じている事を確認してから巻き上げ操作をする習慣をつけた方が良いです。ジャンクフィルムを使って装填練習をしている時に、知らぬ間に引き蓋が僅かに動いて開いている事がありました。この引き蓋はロックが無いにも関わらず、数ミリ動くと口が開いてしまいます。また裏蓋を閉じる際に自動ロックはされず、裏蓋開閉ボタンを手でロック位置にスライドしなければなりませんが、その時に隣接した引き蓋に触りがちになるのです。
両者を比較すると、大判カメラ(4x5)で使うならトヨのホルダーの方が使いやすく、信頼性も高そうです。但し6x12サイズのホルダーはトヨには無いので実質的に選択肢はありません(トヨに似た構造の6x12ホルダーに「カンボC-244 6×12」というのがありますが、とても高価です)。
最後に参考までに、ホースマンの全ロールフィルムホルダーのスペックも掲載しておきましょう。
4x5カメラバック用 | Model 451 | Model 452 | Model 453 | Model 454 | Model 612 |
使用フィルム | 120 | 120 | 220 | 220 | 120 |
公称画面サイズ | 6x9cm | 6x7cm | 6x9cm | 6x7cm | 6x12cm |
実画面サイズ | 56x82mm | 56x68mm | 56x82mm | 56x68mm | 56x112mm |
撮影枚数 | 8 | 10 | 16 | 20 | 6 |
ホースマンラベル色 | 黒 | 赤 | 黄 | 緑 | 黒 |
寸法 | 173x121x47mm | 173x121x47mm | 173x121x47mm | 173x121x47mm | 178x121x48mm |
重量 | 530g | 530g | 530g | 530g | 590g |
6x9カメラバック用 | Model 1 | Model 2 | Model 3 | Model 4 |
使用フィルム | 120 | 120 | 220 | 220 |
公称画面サイズ | 6x9cm | 6x7cm | 6x9cm | 6x7cm |
実画面サイズ | 56x82mm | 56x68mm | 56x82mm | 56x68mm |
撮影枚数 | 8 | 10 | 16 | 20 |
ホースマンラベル色 | 黒 | 赤 | 黄 | 緑 |
寸法 | 143x101x47mm | 143x101x47mm | 143x101x47mm | 143x101x47mm |
重量 | 420g | 420g | 420g | 420g |
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