フィシュアイレンズ用・夜露防止ヒーター
KENのつぶやき vol. 364 (2012.9.9)
そろそろ霧のシーズンがやってきますが、夜間や朝方の撮影で気を遣うのが夜露、あるいはレンズ面の結露です。夜露防止ヒーターと言えば昔はカイロでしたが、最近は星空・風景フォトギャラリーの横田さん作のヒーターが日本のカメラマン/天体愛好家のデファクトスタンダードになっていると思います。
私もタイプ5ヒーター(単三エネループ8本を使う物)を2セット持っていますが、ご覧のように幅がそれなりにあるので(タイプ5で3cm、タイプ5Lだと3.9cm)、鏡筒の短い標準〜広角系レンズでは使いにくい面があります。
試しにSIGMA 15mm F2.8EX Diagonal Fisheyeに付けてみれば、ピントリングをすっぽり覆う形になってしまいます。星野撮影に限らず写真はピント命だと思っているので、ピントリングにコードの付いた(=ちょっとしたショックで動いてしまう)物を付けるのは避けたいです。特にこのフィッシュアイレンズには無限遠マーキングをしていて、真っ暗な状況でも簡単に無限遠にピントを合わせることが出来ますが、ヒーターを付けるとこれも見えなくなってしまいます。
そこでこれらの問題をクリア出来るヒーターの自作に着手しました。先ずは最も難易度の高い 〜つまり画角が広くて、フードの長さが殆どゼロの場所のある〜 SIGMA 15mm F2.8EX Diagonal Fisheyeレンズが相手です。180度の画角でケラれることなく、ピントリングにも干渉しないヒーターが目標です。しかし流石に難易度が高くて、思い立ってから完成まで、基本構想、材料探し、トライアンドエラーを繰り返し半年近く掛かりました。
最初に入手したのはUSB手袋。これに内蔵されているUSBヒーターがお目当てです。USBヒーターを内蔵したグッズは他にもありますが、手袋だと途中で分離出来るコネクターが付いている事と、一つで二つのヒーターがゲット出来るところがミソです。USBヒーターに目を付けた理由は、エネループなどの充電式乾電池を用いると過放電の懸念がありますが、パナソニック・USBモバイル電源パックの様なUSB端子のついたリチウムイオンバッテリーなら、機器側に過放電防止回路が内蔵されているのでその心配が無いからです。実際の運用でも充電が簡単であったり、使用中に通電状況や電池残量が分かるメリットもあります。
白い布袋の縫い目をほどくと、中から黒いヒーター部が出てきました。これはフィルムヒーターではなく、ニクロム線の様な発熱ケーブルを不織布でサンドイッチしたものです。サイズは5x4.5cm。レンズとの比較で分かるように、フードの花弁よりもかなり大きいので、そのままでは取り付けられません。
不織布はしっかり貼り付いていて剥がすことが出来なかったので、発熱ケーブルの位置をダーマットで白くマーキングしてから、カッターとハサミで注意深く切り取って行きます。
作業中に間違えてひとつのヒーターの発熱体を切ってしまいましたが、それで分かったことは、金属単線のニクロム線ではなく、リッツ線の様な細線を多数束ねたような発熱体でした。それ故に不織布の下の発熱体の位置が分かりにくくなっています。
不織布にくるまれたケーブル状態になったヒーターをフィッシュアイレンズのフード花弁に収まるサイズに畳んで、熱伝導率のい良いアルミテープで形を整えます。
次に入手したのは100円ショップのシャンプーボトル。シグマのフード部の外径74mmに対して一回り大きなプラスチック円筒が欲しかったからです。ボトルの外径は80mmです。これをハサミでシグマのフードの形に切り抜きます。
ここで一旦、USBヒーターとシャンプーボトル改フードカバーを仮止めして、問題無いかチェック。フードカバーの形を整えます。
そしてフードカバー内側は隙間埋めと保温効果を狙ってベルクロ(メス)で、外側とヒーター部はパーマセルテープで仕上げて、ヒーターとフードカバーを一体化しました。
完成品をレンズに被せた様子。第一号機なので仕上げは悪いですが、レンズ画角を妨げることなく、またピントリングもしっかり使うことの出来るヒーターが出来上がりました。SIGMA 15mm F2.8EXのフードは熱伝導率の良い金属製で前群レンズにも近いので、フードを暖めることで十分な夜露防止効果が期待出来そうです。
使用状態。念のためにヒーターを二つ用いましたが、結構な発熱量があるので一つでも大丈夫だと思います。このヒーターの良いところは中間コネクターがあるので、一つのみでの使用も出来ることで、バッテリー寿命を倍に出来ます。
取り敢えずフィッシュアイレンズ対策はこれでOKですが、他にも幅広ヒーターを使うことの出来ないレンズがあるので、第二弾、第三弾を考えています。
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