装着簡単! 1cm幅の夜露防止ヒーター
KENのつぶやき vol. 365 (2012.9.15)
写真や天体観測時の夜露防止ヒーターは「星空・風景フォトギャラリーの横田さん」作の物が日本のスタンダードになりつつありますが、写真用として最もポピュラーなタイプ5ヒーターの幅が3cm〜3.9cmほどあるために、レンズに依っては装着しにくい場合があります。前回のつぶやき364ではその典型例としてフィッシュアイレンズを採り上げ、それ用のヒーターを自作しました。今回はその続編です。
タイプ5ヒーターがフィッシュアイレンズ以上に装着し難いレンズが大判レンズ。左はコンパクトなNikkor M200mm F8s(フィルター径52mm)で、右は大判レンズとしては比較的大柄なNikkor W180mm F5.6(フィルター径67mm)ですが、どちらもタイプ5ヒーターに比べて鏡筒部が薄く、使えないことが分かります。
今回はこれらのレンズでも問題無く使えるヒーターを自作しましたが、Nikkor M200mm F8sの鏡筒部の厚みは1cmしかありませんので、ヒーターの幅も1cmです。
先ず入手した材料はニクロム線。今回も電源はUSBモバイル電源を用いますので、スペックは5V、0.5A以内、抵抗値は10オーム以上が条件です。安価なニクロム線と言えばダイソー製ですが、長さ当たりの抵抗値が低く10オームにするには82cmも必要なので今回は採用しませんでした。代わりにネットで見つけた0.2mm径、34.4オーム/mの物を使いました。これなら30cmで10オームになります。
次に入手したのは、100円ショップSeriaで売られているマイクロUSB→iPod/iPhoneへの充電変換コード。マイクロUSBのメス端子がコード付きで105円で手に入り、かつ内部配線がリッツ線ではなく通常の銅線である事と(リッツ線の半田付けは容易では無いので)、データー線が無いので配線時に迷わない点がミソです。端子はマイクロUSBでなくともOKですが、安価にメス端子が入手出来る種類の中では最も小型なので選びました。これに100円ショップでも容易に入手できるスマホ充電ケーブル(USB・A→マイクロUSB)を接続して使います。
製作手順ですが、充電変換コードを切断し、マイクロUSBメス端子にニクロム線を接続します。ニクロム線の長さは電気的に少し余裕を見て35cmとし、この両端をねじって小さな輪を作ります。そこにマイクロUSB端子側の銅線をきつく巻き付けて、銅線側を半田付けし、その上から熱収縮チューブで固定します。ニクロム線には半田が乗りませんので、半田付け前に銅線としっかりと接触させて、銅線側の半田と熱収縮チューブで接触を維持するようにします。
粘着付きのゴムシートと植毛紙を用意し、ゴムシートは1cm幅、植毛紙は2cm〜2.2cm幅に切り出します。植毛紙の方は他の素材でも良いと思います。
ニクロム線をゴムシートの粘着面の上に配置して行きます。ニクロム線は絶縁されていませんので、2本の線が重ならないようにしなければなりません。
その上から植毛紙を巻き付ければ、ヒーター部の出来上がりです。ゴムシートはニクロム線をきつく曲げて断線することを避けるのと、外側への断熱効果を狙っていますので、ゴムシートの無い側をレンズ側にします。
1cm幅のベルクロバンド(表がメス、裏がオスになっているもの)を適切な長さに切り、その一部に小さな穴を開けてUSBケーブルを外側に出せば出来上がりです。ヒーターとベルクロバンドのズレを抑制するために、ヒーター付け根の部分を植毛紙で巻いて固定しています。
試しに通電してみましたが、結構熱くなります。0.2mmという細い部分で発熱し、ヒーター部には熱伝導率の良い素材が他にないので、単体で通電を続けると局所的に高温になり、一部素材を溶かしたりするかも知れません。レンズ装着状態でのみ通電した方が良いでしょう。
大判レンズに装着した様子。1cm幅のヒーターなので、問題無く装着出来ました。
装着するレンズの直径に合わせて長さの違うヒーターがある方が使いやすいことが分かったので、合計三本作りました。長さが違うとは言ってもヒーター部は全て同じで、ベルクロバンドの長さのみが違います。
左前がフィルター径52mm〜67mmのレンズ用で、右前が取り付け部直径100mmまで使えるロングタイプ、そして右後ろは67mmカブセフードの付け根に装着する様に専用加工した物です。このカブセフードはミノルタ D70KAという古い金属製角形フードで、広角レンズに使える事と、熱伝導に優れた金属製という事で、夜露防止ヒーター組み込み用に入手しました。
大判レンズ以外にも、鏡筒が短く、フード最短部も小さい広角系レンズも幅の広いヒーターは装着し難いことがありますが、1cm幅ヒーターなら概ね問題無く装着出来ます。
先ずは日の出撮影時のメインレンズ Tamron SP-AF 28-75mm F2.8 XR Di です。フィルター径67mmなので角形フードが装着出来ます。ヒーターはレンズ前群部分をフード金属部分を通じて暖めますので、高い夜露防止効果を期待出来そうです。
大判レンズにもフィルター径67mmの物が多数有りますので、このヒーター付きフードは大活躍する予定です。
次が夜間撮影時のメインレンズ、SIGMA AF28-70mm F2.8EX。花弁フードの付け根部分に取り付けてみました。ヒーターが細いので花弁フードの開口部を邪魔しません。私の手持ちの標準ズームは全てズーミングで前群が前後に動きますので、ピントリング部にヒーターを付けても余り効果が期待出来ず、フィルター/フード側に付けることが肝要です。
EF17-40mm F4L USMです。ヒーターが細いのでフード取り付け枠の後ろ側、赤鉢巻き部分に収まり、前群レンズを直接暖める事が出来ます。
これはちょっとお遊びですが、こんなレンズにも装着出来てしまう、という例を。私が持っているレンズで最も薄い、ケンコー・ピンホールレンズ。ピンホールとは言ってもレンズ中心部はガラスで出来ていますので、朝方には立派に結露します(笑)。
実際の使用時にはこのような結線になります。ここに写っているのは旧型のサンヨー・エネループ・モバイルブースターですが、現在はパナソニック・USBモバイル電源として後継機が販売されています。2700mAh, 5400mAh, 8100mAhの三種類があり、5V・0.5Aの電流を流した場合の持続時間はそれぞれ2.5時間、5時間、7.5時間となりますので、一番大型の物なら長時間撮影でも問題無いでしょう。
パナソニックのUSB電源は通電時にインジケーターが点き、万一のヒーター断線などで電気負荷が無くなった場合にはインジケーターが消灯するので、ヒーター稼働状態が常に分かります。またインジケーターの色で電池残量が分かり、残量が無くなれば自動停止しますので過放電の心配はありません。
一昔前までは12V電源がポータブルタイプとしては最も一般的でしたが、スマートフォンの台頭で現在は5V・USB電源の方が一般的になりました。リチウムイオン電池を内蔵したタイプ以外にも、乾電池で動く電源もあり(但し容量は少なめ)、予算に応じて選ぶことが出来ます。天体観測に用いるなら赤道儀駆動に12V電源が必要なので12Vヒーターの方が便利でしょうけど、写真撮影だけなら5Vヒーターの方が便利だろうと思います。自作される方は、ご自分の趣味のスタイルに合わせてスペックをご検討下さい。
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