ダイソー水準器を高精度なカメラ水準器にする
KENのつぶやき vol. 369 (2012.11.28)
私が中判フォーマットを使うのはパノラマ撮影(6x17、6x12)が殆どですが、横長画面は水平精度が一層大切です。アートパノラマ170には水準器が内蔵されていますが、小さくて余り見易くありません。トヨフィールド45Aには水準器がありません。アクセサリーシューに取り付ける水準器を数種類もっていますが、アートパノラマもトヨフィールドもアクセサリーシューのサイズが小さい為(古い規格と電子制御ストロボ時代の規格が微妙に異なる様です)取り付けが固く、無理して取り付けても応力が掛かっていて精度が出ていない感じがしていました。そこでボディ本体に見易い水準器を取り付けることにしました。
※なお、今回は大判、中判パノラマカメラに取り付けましたが、一般的なカメラで使う場合はつぶやき233で紹介したプラ板を使った水準器でも応用が出来ます。
安いからではなく、感度が良いのでダイソー水準器を使う
用いたのはダイソー水準器。これを分解して出てくる黄色いチューブです。6x17ともなるとシャッター一押し400円のコストになりますので、コスト優先でダイソー製を選んだわけではありません。手持ちの水準器を色々と比較した結果、僅かな角度変化に対して敏感に反応し、かつ大きくて変位が見易いという点で、ダイソー製が一番優れていたからです。
ダイソー水準器には新種も発売されています。こちらの水準器も大きさ、反応ともに良好でしたが、最初の写真に内蔵されている方が更に優れていたので、用いたのは一枚目の写真の物です。但し、こちらの水準器は驚いたことにアルミダイキャストフレームに気泡入りチューブが取り付けられており、底面の測定基準面とチューブ取り付け角度の精度が高そうで、分解せずにそのまま水準器として用いるなら、このミニ水準器の方がお薦めです。
肝腎なのは取り付け後の水平校正〜海を見渡せる標高の低い場所で。
カメラへの取り付けは、手持ちの水準器を使って三脚上でカメラを概ね水平にし、気泡チューブを両面テープで位置決めした上で、動かないようにホットボンドで固めました。しかし実戦に用いるには水平の校正をしなければなりません。精度を求めるなら地球上で最も水平精度の良い、、、水平線で行うのが筋でしょう(笑)。大切なのは標高が出来るだけ低く、左右の広い範囲で邪魔な島や対岸のない場所で行うことです。水際に立って人間の目線の高さから見える水平線は約4.4km先ですが、標高が高くなるとこの距離が延びてしまい、遠方の島々が水平線の手前側に入ってきてしまうのに加えて、水平線そのものがぼやけてしまいます。
そのことに気づく前に、360度海に囲まれた上関町上盛山(標高345m)で試みましたが、水平線が遠くてぼやけてしまい、ビューカメラのスクリーンに映らず実施出来ませんでした。
【標高による水平線の見え方の違い】
これが水平較正出来なかった上盛山からの情景。水平線の距離は約66kmになります。
この写真は更に標高の高い銭壺山(標高540m)からの情景で、水平線の距離は約83km。ご覧の通り多くの島々が水平線の内側に見えてしまい、肝腎の水平線はぼやけて見えません。
これは宍道湖畔での情景。標高は0mで、カメラ目線の高さは約1.5m。水平線までの距離は僅かに4.4kmです。湖ですが対岸までの距離が10km以上あるので、ご覧の通り水平線がくっきり見えます。
実際の水平校正は銭壺山での撮影の帰り道、標高の低い丘の上で行いました(下の写真)。もっと標高の低い場所の方が良いのですが、海沿いの国道でクルマを駐められる場所が帰路とは反対の方向にしか無かったのと、この場所からでも水平線がくっきり見渡せたので実行に移しました。ここの標高は30mで、水平線までの距離は約20kmになります。
まずはアートパノラマ170です。水準器はボディ上面左側に付けてあります。裏蓋を外し、ピントグラスを付けて、水平線のラインが画面枠と一致するように調整し、その時の水準器の気泡の位置を確認します。
結果は、気泡が丁度ど真ん中の時に水平になり、芸術的な精度が出ていました。アートパノラマには別に水準器が付いているので、こちらと一致するように取り付け時に気をつけたのが良かったようです。
アートパノラマのファインダー内部から見える水準器の気泡も丁度真ん中に来ています。ただこちらは微小角度に対する反応が少し鈍いのと、四角い水準器を斜め上から見る結果、気泡が二つ見えて、見え方が異なるという欠陥があり、気を遣う水準器でした。
続いてトヨフィールド45Aです。水準器はフィルムホルダーを取り付けるグラフロックバックの上面に取り付けました。ピントグラスを外しても残る場所です。
ルーペフードから見える景色。格子線と水平線の傾きを合わせています。
結果は気泡がやや右側に動いたところで水平になりました。こちらは内蔵水準器が無かったので、アートパノラマほどには精度高く装着出来ませんでした。
仕上げは水平での気泡位置にマーキング(基準線)を加える。
カメラの水平出しをしたら水準器そのものを水平に装着したくなりますが、現場でホットボンドを溶かす必要があるので無理です。代わりに水平での気泡位置をデジカメで撮影しておき、その位置を自宅で再現し、新たな基準線を加えます。この瞬間に適当に装着した水準器も高精度水準器に早変わりします。これで真っ暗な夜明け前の情景が何も見えない状況でも、簡単に精度高く水平が出せるでしょう。
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