Spring Scenery Gallery 2005

八幡高原の春は柔らかな光としっとりとした空気感に包まれています。その表情をフィルムにしっかりと記録しようと思うと、自然とコダックのフィルムに手が伸びます。2005年の新緑撮影フィルムは結局全部コダックで、自然で誇張の無い表現をするEPP (Ektachrome 100 Plus Pro), 画面がやや緑に傾き渋く深淵な表現をするPKR (Kodachrome 64 Pro), 夜明け前後でジキルとハイドの性格を持つ常連E100VS (Ektachrome E100VS)の3種類を使い分けました。(フジのアスティアも良いのですが、アスティアをイメージさせる光線に今年は出会いませんでした。)
2005年のギャラリーの分類は手抜きをして昨年と一緒の三部作にしました。風薫についてはちょっと無理のある写真も混じっています(^^;

1. 天と地を繋ぐもの II
テーマは木々が天に伸びる力強さを表現すること。ブナ、赤松、白樺を対角魚眼レンズで捉えました。昨年の学習効果もあって露出に迷う事も無く、構図もそれなりに煮詰められたと思います。極端な逆光で幹の表情を出す為に露出は全部マニュアル。ピントは出来るだけパンフォーカスを実現するために、被写界深度目盛を見ながら目測で合わせています。
【1】魚眼レンズをもってしても全体を収めきれないブナの大木です。それだけにアングルを少し動かすと表情が変わります。雨の降る中で魚眼レンズを上に向けて撮影しました。 【2】蔦が絡みついた赤松の木を主役に、右側の脇役の配置にポイントを置いて撮影しました。構図として面白く撮れたかなと思っています。 【3】白樺の木にくっつく様なアングルで撮影しています。逆光の中で幹の白さ、葉の緑を出せる露出が肝だと思います。


2. 夢景 II
2004年のギャラリーの説明では「風景であって風景でない写真、夢の情景のような写真。それを目指して撮影したKENスタイルの写真のプロトタイプ」と書きましたが、2005年の前半は少し違う表現にしています。E100VSのジキルとハイドの性格を活用して、夜明け前の3枚は白樺林とは思えないような不気味な表現を楽しみました。夜明け後の3枚は鮮やかな発色を活用して2004年同様に夢心地の描写を目指しました。この6枚が同じ日に同一フィルムでわずか1時間の間に連続撮影されたと信じられますでしょうか(笑)。
【4】夜明け前に蒼く発色するE100VSで、朝を待つ白樺林をミステリアスに表現出来ました。アンダー目の露出が不気味さを強調しています。 【5】面白い構図の木が有ったので、やはりアンダー目の露出で捉えてみました。他では見たことの無い白樺の発色が楽しいです。 【6】夜明けが近づき、露出を少しプラス側に振ると、ノーマルな表現に近づいてきます。
【7】太陽が昇って、一転して鮮やかな発色になりました。爽やかな高原の光と風を感じられるような絵を目指しました。 【8】KENらしく(?)、前ボケばりばりの写真です。夜明け前のミステリアスさとは違って、明るく朗らかな写真になったと思います。 【9】一応ルールですから(笑)、KEN流二重露出も使って飛び切りメルヘンチックなカットも撮りました。

3. 風薫 II
「色が少ないからこそ嫋やかな色を感じ、コントラストが少ないからこそ、心の中で壮大な空間が描けるような写真。そんな写真をモノにしてみたいという気持ちで悪戦苦闘している写真達です。しかし...ポジの仕上がりが良ければ良いほど、私の古目のスキャナの再現力とWEBという表示品質の限界にぶつかり、ポジ原板が持つ本来の良さを表現しきれないジレンマに陥っています。」
昨年のこのコメントを今年も変更する必要がない、私が追求し続ける一つのテーマです。今年のお気に入りは14、15で、ウェブ上でも比較的原板の良さを表現出来ています。16、17は昨年と同じKENのブナですが(勝手に名前を付けるな!)、作品というより状況変化による描写の変化を知って頂きたくて同一アングル写真を二枚掲載しました。ウェブでは作品の良さが出難いのが悩みではあります。
10と13は「風薫」というテーマに合わない気もしますが、他に展示すべき場所の無かった写真です(^^;
【10】まずプロローグとして雨の降る早朝の、臥龍山麓からの風景です。霧にかすむブナはこの写真の雲の中で撮影しています。 【11】臥龍山登り口の所の林の情景です。少し冷たい雨と風の香りが伝わりますでしょうか? 【12】霧にかすむ若いブナの木ですが、ウェブ上では良さを殆ど表現出来ない写真です。
【13】ブナの表面に絡みついた蔦を、雨がつたって落ちていました。その雫を写したかったのですが、スローシャッターでは写りませんね。中央上部の葉がブレているのは落ちる雫が葉に絶えず当たっていたからです.. 【14】今年イチバンのお気に入りです。被写体に困っていた時に、構図に苦労して撮影したのが良い結果に結びつきました。手前を邪魔していた葉や木が程よいボケになり、PKRの発色に雨とキリが加わって独特の奥行き感、空気感が出たと思います。 【15】雨の白樺林です。前ボケを注意深く使って、地面の美しくない部分を隠し、EPPの落ち着いた発色と控えめな二重露出でしっとりとした空気感表現を狙っています。
【16、17】この二枚は昨年と全く同じKENのブナの情景です。左が落ち着いたEPPを使い、キリが最も濃くなった頃の写真。右が緑が強調され深淵な表現をするPKRで、キリがさほど濃くない時の情景です。フィルムやキリの違いでの写り方の変化を味わって下さい。ウェブ上では右の写真の方がまとまりがありますが、ウェブ表現の限界を超えている左の写真の方が原板上では味わいがあります。