Cherry Blossom 2005
(桜のギャラリー2005)


マクロ作品
広島市内の比治山公園と高天ケ原墓苑、この二ヶ所には毎年通っています。花のつき具合を枝ごとに理解しており、夜明けの光の来る方向も分っているので、ポートレート的な作品をここで撮っています。
桜は花が密集して咲きますし、枝や電線などで背景が雑然としやすいものです。その中でポートレート的な写真を写す肝は、一輪〜数輪だけ浮き上がったように咲く花を見つけることと、その花の前後を枝ではなく、他の花の房で美しく覆い隠せるアングルを探すことだと思っています。今回の5枚の写真のうち、最後の写真を除けば傍目には「とんでもない」方向にカメラを向けて撮影しています。
1 比治山公園の染井吉野です。今年撮影に行った日の朝には日の出が無く、曇り空の夜明けでした。しかしE100VSの蒼い発色が重なって妖艶な写真になりました。  2 こちらは高天ケ原にある染井吉野です。夕方の晴天下で撮影していますが、優しい感じにする為にコントラストを抑え、画面整理を心掛けました。  3 曇りの夜明けの光の中に咲く一房を清楚な感じに仕上げました。比治山公園での撮影。
4 八重咲きの桜を淑やかな感じで。多くの花にピントが来るように多少絞り込み、その上で美しいボケを保ちつつ背景整理するのはスリリング(結構難しい)です。高天ケ原での撮影。 5 高天ケ原にある小さな枝垂れ桜の写真です。2005年の開花は「一気呵成」で、この枝垂れ桜は4月9日の朝に満開になったと思ったら、夕刻には大半が散ってしまいました。その夕刻、残り少ない花で画面構成しました。 


湯来の枝垂れ桜
湯来の枝垂れ桜は、実は民家と個人所有の畑に囲まれているので、人工物に邪魔されずに全景を収められる撮影ポイントは2〜3ヶ所しかありません。以前は色々な構図に挑戦したりしましたが、どれも仕上がりが今一つなので、今年は構図に凝らずに正攻法で取り組む事にしました。フィルムも朝夕の撮影には絶対の信頼を置くエクタクロームE100VSでの勝負です。貴婦人の様な品格を持つこの桜は、朝の目まぐるしく変化する光の中で様々な表情を見せてくれましたが、撮影ポイントも基本的な構図もフィルムも変えない撮影がこのことを逆に教えてくれた気がします。
6 夜明け前に微かな霧が漂っていました。肉眼では識別するのが難しいこの霧は、30秒という長時間露出によって浮かび上がり、桜を真正面から捉えた構図にステキなアクセントを加えてくれました。 E100VSのブルーと夜明け前のフラットな光がこの桜の淑やかさを引き立てていると思います。 7 6の写真撮影の直後に、カメラを横位置にして撮影したカットです。人工物を隠すように計算して残された植え込みは、この桜が自然の中で伸び伸びと育っているかの様な表情を恵んでくれます。右下の明かり(桜の後にある街灯代わりの灯籠)が無ければ更に良かったのですが。 8 撮影場所を桜の北西側の畑に移して撮影した、太陽が顔を出した直後のカットです。太陽光が逆光となるこのアングルでは、朝の空気感は表現されるものの、桜の花の表情が消え気味で、あまり魅力的とは言えないかも知れません。
9 撮影場所を6/7と同じ場所に戻っての撮影です。3枚目に対して太陽との位置関係が代わり、真横からの光線になった結果、桜の花が透過光で白く輝き、もやの立ちこめる朝の空気感と共に魅力的な絵になりました。
0.3EV明るい作品がフォトテクニック2006年3/4月号・必撮風景&ネイチャー部門大掲載
読者が選ぶ2006年3/4月号ベスト3
10 同じ場所で少し遊んだカットです。桜を画面からはみ出るぐらいに堂々と捉えて、しかも私流の二重露出で現実以上に湿り気のある空気感を表現して見ました。  11 別の日の、曇り気味の朝の表情です。日の出の時刻を過ぎているので、E100VSは素直な表現をもたらしています。自然体の写真と言えるかも知れません。
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12 ケンコーソフトレンズでの表情です。ソフトレンズの描写もこの貴婦人の表情を引き立てると思います。この写真のみフィルムはフォルティアです。コントラストの低いこの情景では同時に撮影したE100VSと大差ない表現ですが、やはり緑や赤の鮮やかさが上です。 13 同じ構図の写真ばかり御覧にいれたので、最後にお口直しを。2005年の「いつもの枝」です。日の出後の撮影なので、華やかな雰囲気になっています。この二日後の夜明けに再度撮影に臨みましたが、既に花は減っていて良い写真にはなりませんでした。良い枝の表情は一期一会、今年はチャンスを逃しました。