Cherry Blossom 2008 Part 2 (湯来と長沢の枝垂れ桜)

毎年通っている広島市佐伯区湯来町の湯の山温泉入り口にある枝垂れ桜と、広島県山県郡北広島町長沢(ながぞう)にある枝垂れ桜の写真です。湯来には二日通いましたが、幸運にも初日には雨が降って雨霧が発生し、幻想的な情景に恵まれました。二日目は逆に春うららかな朝で、情景は平凡でしたが、KENらしく朝の光の変化を捉えて作品を作っています。
長沢の枝垂れ桜を撮影に行った日は曇りの朝で、平凡な光線状態でしたが、与えられた条件の中で出来るだけの変化を試みてみました。



湯来の枝垂れ桜 〜雨中幻想〜

雨に恵まれた湯来の枝垂れ桜です。背景が様々に変化して、近年最も満足出来る作品を残す事が出来ました。この情景だけで36枚撮りフィルム5本を消費したので、掲載写真を選ぶのにも苦労しました。
1 先ずは定番構図ですが、夜明け前の蒼い発色と、背景にうっすらと掛かった霧が良い効果を出していると思います。 2 個人的に10と共に、2008年で一番心に残ったカットです。全体を包む霧が幽玄な雰囲気を作っています。上部の空間が間延びしていますが、これが襖絵の様な雰囲気につながり個人的にはOKです。 3 2を横位置定番構図で捉えました。桜を包み込む霧が柔らかな情景を作っていて、これも私のお気に入りです。
4 2と同じ構図ですが、日の出の時刻を超えてE100VSの発色がノーマルになりました。霧の中に僅かに浮かぶ稜線がポイントの絵です。 5 辺り一面を霧が被い、嫋やかな空間が作られました。余白をタップリと採った構図はフォトコン向きではありませんが、私の好きな絵柄です。 6 時間が経って彩りが更に鮮やかになってきました。色と霧の嫋やかなハーモニー。
7 雨が止んで背後の霧が大きく変化しました。沢山撮影した中で、最も霧の表情が豊かなカットです。 8 霧を背後に、枝垂れ桜の中央部をアップで狙いました。晴れの日には無い嫋やかな和の世界を感じます。 9 山に掛かる霧の表情が良くなった所で、もう一枚アップで撮りました。



湯来の枝垂れ桜 〜麗らかな日の表情〜

有る意味で平凡な朝の湯来の枝垂れ桜の表情を集めてみました。平凡な日でも光線状態とフィルム種類によって色々な表情を見せてくれます。
10 2と共に2008年で一番心に残った枝垂れ桜の写真です。枝垂れ桜が薄明の僅かな光を受けて暗闇に輝いています。この写真が撮れるのは夜明け前の10分程度の僅かな時間だけです。この手前では暗過ぎて花が写らず、この直後には11の様な写真になります。 11 肉眼ではまだ暗い朝ですが、フィルム上には様々な情景が表れ始めました。まだ蒼い世界に佇む凛とした枝垂れ桜です。 12 E100VSの発色がどんどんノーマルに近づきますが、まだ蒼さが残る淑やかな色合いで画面一杯に捉えました。
13 日の出の時刻を過ぎて、暖かい色合いになりました。春うららかな朝の空気を感じる為に、空間を多めに採っています。 14 ここからベルビアにフィルムを変えて、一層華やかな色合いになりました。春色の共演といったカットです。 15 朝陽が僅かに射して、枝垂れ桜の姿に立体感が生まれました。
16 16-18はアップで桜の別の表情を狙いました。朝陽が射した桜をアップで、華やかさと荘厳さが感じられるでしょうか? 17 遠方の山の稜線を桜で囲んでみました。 18 桜の根元です。春の光を感じて頂けますでしょうか。根本付近には立ち入り禁止になったので、以前のような作品を撮れないのが残念です。



長沢の枝垂れ桜 〜老女の朝〜

長沢(ながぞう)の枝垂れ桜です。樹齢420年のこの老木は、枝を失い、幹を傷めながらも毎年精一杯の花を咲かせて沢山のカメラマンを惹き付けています。撮影に訪れた日は生憎曇りの朝で、時々朝陽が顔を出す程度の状況で霧などの変化もなく、平凡な一日でした。私は前夜から徹夜で光の変化を追いかけましたが、頼みの月明かりが雲に隠れて無かったので、夜中の表情は捉え切れませんでした。
19 肉眼ではまだ真っ暗な中に佇む凛とした桜です。薄明光の存在はカメラの露出計が反応を始めることで教えてくれます。 20 縦位置で空を入れてみましたが、曇りの日の夜明け前の雰囲気を感じて頂けますでしょうか。開放8分の露光でやっと浮かび上がる世界です。 21 長時間露光中にクルマがやって来て、桜をヘッドライトで照らしてしまいました。慌ててシャッターを閉じて出来上がった写真です。ドラマティックですが、人為的でもありますね。
22 普段の春の朝の、静かな老女の姿も撮影しました。 23 暫く待っていたら、やっと朝陽が射し込んで、老女にも華やかさが加わりました。 24 定番ポジションから90度回り込んだ所から撮ると、老女は両手を拡げて舞を舞っています。太陽を背中に受けて輝く一枚。