前回つぶやきからの続きです。
前回分にも書きましたが、EOS1NにKenko MC
SOFT 85mm F2.5を付けて、惚け味の確認をしたところで変なことに気づきました。惚け味を変化させるために絞りを動かしたときの、絞りとシャッタースピードの関係がおかしいのです。特にF5.6とF8の間ではシャッターが1.3段から1.7段ぐらい動きます。本来1段でないといけないのですが....
このソフトレンズの絞り目盛は
8 5.6 ● 4 ● ● ● 2.5
になっています。これから推測すると2.5から4までは1/3段刻み、4から5.6は1/2段刻み、そして5.6から8は1段と思われます。1/3段系列のEOS1Nで露出を計ると、2.5から4までは素直に1/3段づつシャッタースピードが変化しましたが、4から先は曖昧になり(1/3段刻みの露出計で1/2段刻みの絞りを測定すれば当然の結果ですが)、5.6と8の間には1.3〜1.7段の差が見られたのです。
しばらく考えた末に、実効絞り値を精密に測定する方法を思いつきました。ライトボックスの上にレンズを下向きに置き、レンズマウント側から入射光露出計で測定するという方法です。このレンズの最後群はかなり前方にあるため、後側は穴状になっていて、入射光露出計の測光部をすっぽり突っ込む事ができ、外光の影響を除外することが出来ました。セコニックの露出計の測定単位は0.1EVなので、かなり精密な測定が可能です。結果は以下の通りです。絞りの基準点はF2.8にしました。EOS1Nにレンズを付けて、ライトボックスの上に置き、その状態で露出を測定したところ、プラスマイナス0.2EV(つまりEOS1Nの露出精度)の誤差内で、ケンコーソフトとタムロンマクロのF2.8の絞り値は一致したからです。
結果は思ったとおり、F5.6とF8の間には1.5段の違いがありました。だからF8の実際の絞り値はF9.5です。マニュアル撮影のときには気をつけなければなりません。それ以外の絞り値については、F4のところで0.1EVの差がありますが、実用上問題となる差は無いと言えるでしょう。
F3.2、F3.5、F4.5のところにも一見計算値と表示値の間に違いがあるように見えますが、これは絞り表示ルールのせいで、実際には違いはありません。つまり実際にはF4.8なのだけど、それをEOSの1/2段系列ではF4.5と表示するのです(他メーカーもほぼ同様、詳細はこちら)。
さて、いよいよ撮影テストです。屋外の花を被写体に、開放から最小絞りまでの全ての絞り値で撮影してみました。結果を見て幾つか気付いたことを。
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ソフトな惚け味の点から言えば、開放からF3.5(F4の一つ手前)ぐらいまでの間が良いみたいです。それ以上になると惚け味が煩雑になって綺麗な絵柄になりません。ケンコーのカタログにはF8(実際はF9.5)で通常並のレンズになるとありますが、イマイチシャープさには欠けるようです。
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テスト撮影のときには三脚を使わなかったのですが、このレンズで絞り込んで撮影する場合は三脚が必須の様です。絞りが非自動の為に、絞り込んだ撮影時のファインダーはかなり暗くなります。その結果、ピントの山が分かりにくくなり、ピンボケを生んでしまいました。焦点距離85mmですから、絞り込んでも被写界深度はそれほどには深くなりません。もっとも、このレンズで(特にF4以上に)絞り込んだ撮影というのもあまり意味がないようには思います。
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開放付近だとソフト効果が高いので、やはりピントの山が分かりにくいです。ピント合わせは慎重に...三脚を使った方が良いでしょう。
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このレンズの最短撮影距離は80cmで、85mmレンズとしては標準的ですが、マクロ屋の私の使用パターンからするとちょっと遠すぎますね。いずれクローズアップレンズを併用しようかと思っています。
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フードが無いので、何か適当なものを模索中です。52mmの金属式ねじ込みフードあたりが良いのでしょうが、脱着の容易さ、収納時の逆付けの可能性などを考えると、キャノンのEF50mmF1.8II用のフードが良いかも知れません。
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F2.5
ソフト効果は最大で、背景のボケなどもとてもスムーズです。
画像を軽くするために小さくしましたので、画面上では細部が描写されていませんが、ピントには芯があります。多くの被写体の場合、このソフト効果は過大かも知れません。
以下の画像の多少の構図の揺れはご容赦を。横着して手持ち撮影だったので。 |
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F2.8
一見、上の写真と違いがありませんが、左側の花の上の背景のボケ、右上奥の花のボケなど、多少姿がはっきりしてきています。ソフト効果も僅かですが減少しています。実際にはこれぐらいのソフトレベルでの撮影が無難かも知れません。 |
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F3.2
一段と背景の描写がはっきりしてきて、一方でソフト効果は減少してきています。 |
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F3.5
画面上の写真だと、そろそろソフト効果が目立たなくなってきていますが、原板だとまだあります。個人的にはしかしこれぐらいのソフト効果が下限かなと思います。背景のボケもある程度煩雑になりつつあります。 |
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F4
大分背景が煩雑になってきました。ソフト効果も弱くなり、写真を見ても弱いソフトの結果なのか、シャープさの無いレンズ描写なのか分からなくなる、そんな分岐点です。 |
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F4.5
個人的に、この背景のボケは煩雑すぎて、許容範囲外です。ソフト効果は原板でもあまり感じません。 |
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F5.6
ここまで来ると、シャープさの足りない普通のレンズで、不用意に絞って撮影した写真、という感じです。ソフト効果は原板でも認めることが困難です。 |
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F8(実効値F9.5)
質の悪い普通のレンズで撮影した、という感じです。シャープさは足りません。実はこの写真、原板で見るとピンボケです。手持ち撮影で、ファインダーが暗くてピントの山が分かりにくかった為です。非自動絞りのレンズですから開放でピントを合わせてから絞り込まないと、ピンボケになります。その為にも三脚が必要ですが、しかしこのレンズのこの絞りで写真を撮る意味を感じません。 |
77mm径のソフトンフィルターの実売価格ぐらいの値段で手に入れた、生粋のソフトレンズ。正直に言えば今回のテスト撮影だけではソフトン・Bあたりとの違いがイマイチ分かりません。これからしばらく使い込んでみようと思います。
余談ですが、T町店の店頭に中古の52mmソフトン・Bが安価にありました。Tさんはケンコーのソフトレンズ用にと薦めてくれましたが、しばらく考えたあげくに買いませんでした(笑)。ソフトにソフトンつけてどうするのだ!>Tさん |