10月7日と10月14日に引き続き、10月27日に3回目の霧の海撮影に出掛けました。過去二回が
10月7日;殆ど成果無し(つぶやきvol.105)
10月14日;徹頭徹尾霧に飲まれて全く成果無し(つぶやきvol.108)
だったので、少々悔しかったのです。10月21日の週末は天気が悪く出掛けられませんでした。
前日26日の夜まで実は東京出張で、帰宅したのが夜10時過ぎ。私はさっそくインターネットで三次市の天候チェック...土曜日は「晴れ後曇り」で日曜日は「雨」との事。前回の撮影で声をかけてくれた年配の女性の言葉
「え〜っとですね、天気の悪くなる前、これから天気が悪くなるという
時で、
朝の天気は良い日」
「その時にはですね、霧が低く出るんです。するととても綺麗に見えますよ。」
を思い出し、まさにその女性が語った言葉の様な天気予報です。それで土曜日に出掛けることにしました。出張では丸二日さんざん(合計18時間ほど)歩き回ったので、下半身が筋肉痛だったのですが、悠長な事は言っていられません。
恒例の朝3時に起きて、クルマで三次を目指します。いつものように向原から北では霧が出ていて、撮影スポットに着いたのが朝4時10分頃。しかしその場所はまたも霧に包まれていました。空に天の川が見えたので14日の時ほど霧は高くはありませんが、その場所は霧の上面にかかってしまっています。それで私はそこでの撮影に見切りをつけ、今まで行ったことのない高谷山(三次市の西側にある霧観望の名所)に行ってみることにしました。
友人MATIA氏の報告によれば、国道54号線から高谷山への道は狭くすれ違いも困難な細い道だと聞いていましたが、実際に行ってみると行程の殆どがセンターラインのある二車線の広い道で、頂上付近の駐車場に至る最後の数100mだけが一車線の(それでもすれ違いは可能な)道でした。後で地図を見ると、山を登る車道はふたつあり、途中のY路地を右に行けば広い道、左に行けば細い道になっていました。恐らくMATIA氏は左の道を登ったのでしょう。霧は山を登る途中とても濃くなりましたが、駐車場に着くと霧はありませんでした。駐車場は舗装部分にクルマ10台ぐらい停められるスペースがあり、未舗装部分まで含めれば20台以上は大丈夫の様です。その脇にはトイレもありました(もちろん水洗ではありませんし、照明もありませんが)。さすがは名所です(笑)。
霧の海展望台は駐車場から歩いて2〜3分の所にありました。到着は4時50分頃です。先客が既に2名、私と一緒に登ってきた夫婦が2名おられて、私は展望台の左から「5番目」のポジションを確保しました。全部で8〜9名分の三脚スペースしか無いあまり広くない展望台なので三脚は全開にせず、少ない開脚で立てました。スリック・ザ・プロフェッショナルはその様な中途半端な使い方でも絶大な安定感があるので安心です。カメラをセットしながら周りの方の機材を見ると、全員が中判でした。マミヤプレス、ペンタックス67、マミヤ645、ペンタックス645などなど...一人EOSの私は場違いなようです(笑)。
霧の海の展望台の標高は1:25000の地形図で見ると約480mで、いつもの撮影場所の435mと比べると45m程高くなっています。この違いが効いたのかこちらは霧には包まれておらず、月のない真っ暗な景色に目を凝らすと眼下に広がる霧の海が見えました。
先客で一番左のポジションを確保された、いつもここに撮影に来ていると言うベテランに話をお伺いすれば、太陽の登る方角は展望台の向きに対してやや斜め右側(南寄り)だそうです。その方向には太陽の水先案内人である水星が輝いていました。しかし展望台の左右には大きな桜の木があり、「5番目」のポジションから日の出を狙うと桜の枝がどうしても画面に入ってしまいます。色々とチェックしてみると展望台から桜の枝に邪魔されない撮影ポジションは左端の二人分だけでした。そんなスイートスポットの少ない展望台ですが、撮影や観望に訪れる人は日の出後まで絶えることが無く、以前インターネットで読んだ「薄明の始まる前までに着かないと、三脚を立てるスペースもない」というのは事実でした。またそのインターネットには「徹夜組」がいるとも書いてありましたが、実際テントを張って徹夜している人もいました。だから展望台の特等席は徹夜組や地元の方に常に占有される事になります。
やがて薄明が始まり霧の海の景色が肉眼にもはっきりと見え出しました。展望台の左から「5番目」のポジションから見るその景色は、太陽の昇る位置を遮る様に桜の枝が張りだし、霧の海の手前には木立があります。望遠で撮影してもこれらは必ず写り込みます。そしてこの日の霧の高さでは、太陽が昇る霧の水平線(?)の手前に全く山のシルエットが無く、構図に変化が生まれません。霧の水平線は上空の雲とは境目がイマイチ不明瞭なので、雲間から昇る太陽にしか見えない様に思えました。
やがて朝焼けが始まりました。私は暫く景色を眺めていましたが、私のイメージする霧の海の絵柄は霧の中に山の姿が浮かぶ物なので、南東の方角がそれに近いと思い展望台から撤退しました。展望台から見る南東方向は桜の木によって完全に遮られているからです。既に数十人のカメラマンがひしめくこの場所で「5番目」の上質なポジションがその後どのような取り合いになったのかは知りません(笑)。展望台の目の前の斜面に下りると南東方向がよく見えます。そこで構図を作り何枚か撮影しました。その日の朝焼けはさほど赤くならなかったので、構図を確認し、露出などのデータを得る為のテスト撮影です。
やがて展望台から「出た出た!」という声とシャッター音が響きわたりました。日の出です。霧の水平線から真っ赤な太陽が顔を出したのです。展望台下の斜面をかなり下りた私のポジションからは手前の木立が邪魔して太陽が完全には見えませんでした。それでカメラを3mほど高い所に移動して撮影....しかし、思ったとおり雲間から昇る太陽という絵柄でたいした事はありません。
日の出から10分もすると、早くから来ていたカメラマンが帰りだしました。普通なら日の出後も急速に変化する光線の中で撮影を楽しむのが「日の出撮影」だと思うのですが、構図に面白味も変化も無い展望台からの景色は、日の出の瞬間だけが勝負の様です。その瞬間空が真っ赤に焼ければ良いのですが、あまり焼けなかったこの日はハズレという事でしょう。常連カメラマンの帰った後のスペースは霧の海を観望に来たアベックとか若い女の子のグループに占有されました。
初めて来た高谷山・霧の海展望台の感想は「イマイチ」です。確かに霧に包まれる事は少なく、三次市街地上空の霧の海を見ることが出来ますが、写真撮影の観点からすると絵柄に変化がありません。改めてインターネット上で公開されている高谷山からの霧の海の写真を見てみると、例の桜の枝の有無を除けばみな同じ様な物ばかりでした(典型的な写真はこちら)。また桜の枝に邪魔されないポジションは、多数のカメラマンが訪れる名所なのにたった2名分しかなく、それらは徹夜組や地元の方によって占有されるので「訪問組」は確保することが困難でしょう。それに多数のカメラマンがいるという事は、マナーの悪い人もいるわけで、狭い展望台最前列でベルボン・マーク7Gの脚を全開にして、私が隣で星野撮影してるのを気にもせず頭にヘッドライトをつけてカメラのセッティング作業をして、あたり構わず強い光を浴びせかける失礼極まりないマミヤ645輩もいました。(それに対しベテランの方は懐中電灯に赤いセロファンを貼られて必要なときだけ点灯されていました、やっぱりベテランのマナーは違います)。
霧の海の絵柄だけなら、いつも私が行く場所でも大差ありません。むしろいつもの場所の方が霧の高ささえ低ければ山のシルエットが沢山あるはずで、より良いと思います。欠点は標高がやや低いのと、より江の川の上流にあるので霧に呑み込まれることが多いことでしょうか。
私の霧の海撮影の挑戦はまだまだ続きます。毎回の事ですが霧の海の撮影が終わった後で直ぐには帰宅していません。まだ霧のあるうちに周囲をクルマで走り回り、新しい撮影スポットの開拓をしています。三次盆地の周囲半径15kmぐらいの領域は走り尽くしたと行っても良いでしょう(笑)。そんな実地検証を更に積み重ねたこの日、図書館から連絡があり「三次盆地の霧の研究」という本を入手しました。霧の海の撮影のためにとうとう学術研究の書籍まで読むことにしたのです。実地検証と研究書読破の結果がどうなるか、この続きはまたいずれ。
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日の出を望遠で撮影した写真。ご覧のように霧の海と上空の雲の境目は不明瞭で、望遠で撮ると雲間から昇った太陽にしか見えません。これは展望台の下から撮影した写真で、桜の枝は避けられていますが、逆に手前の木立を避けることは出来ません。
EOS3, SIGMA AF 70-200mm F2.8EX HSM (200mm),
F16, AE(-0.3EV, 1/25 sec.), E100VS
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EOS3, SIGMA AF28mm F1.8 II,
F16, AE(-0.3EV, 1/40sec.), E100VS
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ほぼ同じ位置から広角で撮影した写真。広角なら霧の海の存在感が出てきます。ご覧のように太陽の位置に桜の木の枝が垂れ下がり、展望台の上からだと枝と太陽が重なってしまいます。また画面右側に山のシルエットがわずかに見えますが、これも展望台からだと右の木陰に隠れてしまいます
展望台の一番左端からなら、この写真右手にある木立や上部にある桜の枝に邪魔されない撮影も可能ですが、5時前に到着してもその特等席は確保出来ません。 |
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