2002年1月19日にこのつぶやきを上梓してから、沢山の新情報が集まりました。その度に追記を繰り返してきましたが、読み難くなりましたので、2005年10月2日に読みやすいように書き直しました。以前のページはこちらにあります。
初期型のEOSに、シャッター幕に油のような汚れが付着して開閉不良になることが多発しています。この事について知り得る情報を整理してみました。
お願い:このつぶやきは皆さんの情報によって、より詳しい物にして行きたいと思います。新たな情報がありましたら、メール、又は掲示板への書き込みでご連絡下さい。
1 症状
見た目では、シャッター幕の左半分に油のシミの様なものが付着しはじめ、症状が進むと、コールタールの様な粘度の高い黒いものがベットリと付着します。
この症状が発生すると、撮影時のシャッター幕の開閉が正常ではなくなり
・画面の下または上1/3ぐらいが未露光になる
・完全な未露光になる
という不具合が発生します。前者はシャッターの先幕と後幕が付着して、先幕が走る途中まで後幕がついていってしまった物。後者はその付着がより強固になって、終わりまで後幕が先幕に付着したままで作動してしまったものです。
この症状が発生しても撮影時のシャッター音は正常に聞えますので、現像するまで故障には気づきません。また症状が軽い内は全コマ発生するわけでは無いので、最初の内は気づかないかも知れません。もし画面の一部が真っ黒な写真がひとこまでもあれば、シャッターをチェックした方が良いでしょう。
2 原因
EOSのシャッター幕は上から下に走ります。下まで走りきったシャッター幕を受け止める為に小さなゴム片がつけられています。通称「ダンパーゴム」とか「シャッターブレーキ」とか呼ばれる物です。位置的には裏蓋側から見て、下側フィルムレールよりもやや下のあたりの裏側です(カメラを分解しなければ見えません)。このゴム片が時間と共に加水分解でドロドロに溶けて、下りてきたシャッター幕に付着するのです。
これはゴムの材質と空気と時間の問題ですので、対策前のシャッターを搭載したEOSなら必ず発症すると思って良いと思います。
キヤノンはこれを不良とは認めていません。かつてCAPA誌で話題に取り上げられて、メーカーの回答として「経年変化の一つであり、不良とは考えておりません」との主旨のコメントを寄せています。従って修理は有償です。
3 修理方法
溶けたゴムの付着したシャッター幕の交換、及びゴム片を対策品に交換することが必要です。仮に部品を入手したとしても、シャッター速度の測定と調整が必要なので、自分で修理することは無理でしょう。キヤノンに修理に出すと、以前は11000円〜15000円程度請求されていました。私が1998年8月にEOS630を修理に出したときの請求書には
技術料金10,200円、 部品代金1,000円、 運送諸費用1,000円、 小計12,200円
消費税610円、 総合計12,810円
と書かれています。但し2003年頃からシャッター幕修理が重修理から中修理にランクダウンしたようで、修理費が8500円程度になっている様です。インターネット上に情報が複数ありますので、興味の有る方は検索してみて下さい。
メーカー修理ですが、2005年9月時点ではまだ修理可能の様です。正確に言えば修理不能になったという情報はまだありません。EOSの機能維持部品の保有期間は製造中止後10年で、EOS650〜EOS10の保有期間が既に過ぎているのですが、幸いにもシャッター幕部品がEOS100あたりとも共通のようで、シャッター不良に限り修理可能でした。しかしそのEOS100も、EOS55が1995年9月に発売された際にひっそり製造中止になっていますので、既に10年が経過しています。EOS55とそれ以前のシャッターが共通かどうかは不明ですので、もしメーカー修理を考えている方は、至急キヤノンに問い合わせした方が良いでしょう。
なお、2006年1月にEOS620のシャッター不良の報告がありました。キヤノンに修理を依頼したところ部品が無いので修理不能だったそうです。X=1/250のEOS620とそれ以外の中級EOSはシャッター構造が違う筈なので、この修理不能情報がそのまま他のEOSにも当てはまるのか不明です。
私のジャンクEOS650はシャッター幕をベンジンで清掃して、一応使えるようになってはいます。しかしこれはあくまで素人療法であり、下手をすると清掃時にシャッターを破損しますし、成功しても本来必要な「ゴム片」無しでシャッターを作動させていることになります。メーカー修理可能であれば、そちらをお勧めします。私の方法はメーカー修理不可能になった後の次善の策でしょう。
EOS650シャッター汚れ修理記事はMATIAさんの「ジャンク大帝」(初回修理分)と、つぶやき151(再修理分、映像入り)に掲載しています。
4 不具合を起こす機種はどれか!
これが皆さんにとって一番関心の深い所ではないでしょうか。以下に知り得た情報と、それに基づく危険度をまとめてみました。
機種名 |
発売 |
シャッター不良情報 |
危険度 |
コメント |
EOS650 |
87/3 |
私は延べ3台のEOS650中古を購入し、3台共にシャッター不良でした。インターネット上でも650の不具合情報は多数有ります。 |
大 |
シャッター不良の代表機種であり、シャッター交換した中古以外は買うべからず。 |
EOS620 |
87/5 |
長年に渡りEOS620のシャッター不具合情報はありませんでしたが、2006年1月になってべっとりとしたゴム付着の症例が報告されました。最初にこのつぶやきを書いた頃に某カメラショップでは、620はX=1/250秒を実現するためにT90系のシャッターを搭載しているので、不具合は出ないと言っていましたが、2003.10.1に14〜15年使ったT90のシャッターに油汚れの様な物の付着が発生という読者からの情報がありました。更に数年を経てEOS620も発症する時期になったようです。(2006.1.25追記) |
中 |
他のEOSがシャッター不良を多発させる中で、EOS620は発売から20年近くも無事でしたが、とうとう発症する年齢になったようです。今後は発症を覚悟した方が良いでしょう。 |
EOS750 |
88/10 |
友人がシャッター不良中古物件を見たことあり。インターネット上にもシャッター不良情報あり。 |
大 |
入門機でシャッター交換した人は少ないでしょうから、中古は手を出すべからず。 |
EOS850 |
88/10 |
情報は特に見掛けませんが、EOS750の姉妹機種。 |
大 |
同上 |
EOS630 |
89/4 |
私の630はシャッター交換。インターネット上にもシャッター不良情報多数あり。 |
大 |
シャッター不良の代表機種であり、シャッター交換した中古以外は買うべからず。 |
EOS-1 |
89/9 |
ダンパーゴムの付着に関するシャッター不良情報を見掛けません。フラッグシップ機のシャッター構造は違うようです。 |
多分
大丈夫 |
大丈夫と思われます。もしEOS-1のシャッターへのダンパーゴム付着情報をお持ちの方はご一報を。 |
EOS RT |
89/10 |
EOS630と中身は一緒。インターネット上にもシャッター不良情報あり。 |
大 |
シャッター不良の代表機種。自己修理(シャッター清掃)もRTの場合はペリクルミラーを外す必要があり、事実上不可能です。購入はシャッター交換済み品だけにしないと痛い目に合います。 |
EOS10 |
90/3 |
シャッター不良の中古を見たことあり。またインターネット上にもシャッター不良情報あり。その後の症例は最近急増しています。 |
大 |
これもシャッター不良の代表機種。 |
EOS700 |
90/3 |
EOS700所有者の方からダンパーゴム付着によるシャッター幕不具合発生し、修理したとの報告がありました。 |
大 |
入門機でシャッター交換した人は少ないでしょうから、中古は手を出すべからず。 |
EOS1000
QD |
90/10 |
私のEOS1000はシャッター不良でした。インターネット上でも情報多数。 |
大 |
同上 |
EOS100
QD |
91/10 |
読者の方から2例のシャッター不良の連絡がありました。その後の症例は最近急増しています。 |
大
|
比較的新しい機種なのでつぶやき上梓時には故障例が少なかったですが、最近故障報告が急増しています。手を出さない方が良いでしょう。 |
EOS1000
QD-P |
91/10 |
不良機種1000Sと1000QDに挟まれた機種ですから、当然不良持ちです。 |
大
|
入門機でシャッター交換した人は少ないでしょうから、中古は手を出すべからず。 |
EOS1000S
QD / QD-P |
92/3 |
1000Sの不具合機種を買われた方がおられます。また、1000Sの修理を何度か受け付けたカメラ店がありました。その後の症例は最近急増しています。 |
大
|
入門機でシャッター交換した人は少ないでしょうから、中古は手を出すべからず。 |
EOS5 |
92/11 |
シャッター不良中古を見掛けたこと無し。インターネット上でも不具合情報無し。但し、中野のFカメラに「シャッター幕交換済み」と書かれた中古物件が1台あった様です。ダンパーゴムの加水分解に伴う交換かどうかは不明です。
シャッター幕のリンク形状が一般的なEOS中級機ではなくT90のシャッターに類似していますので、発症頻度はT90/EOS620に近いかも知れません。 |
小〜中
|
EOS5にシャッターの問題があるのかどうか不透明です。購入時にはシャッター幕を念入りにチェックして、少しでも染みがあれば疑った方が(手を出さない方が)良いと思います。 |
EOS Kiss |
93/10 |
2002年10月にオークションにシャッターに油のような染みのあるKissが出品されました。またカメラ店にお勤めの方から、初代Kissのシャッター修理を複数台受け付けたとの情報がありました。その後の症例は最近急増しています。 |
大
|
比較的新しい機種なのでつぶやき上梓時には故障例が少なかったですが、最近故障報告が急増しています。手を出さない方が良いでしょう。 |
EOS100
QD-P |
93/11 |
シャッター幕交換済みと書かれた中古(生産年記号I)があったとの情報を頂きました。またダンパーゴムが溶けてシャッターに染みのある品がオークションに3〜4台出品されました。
キヤノンのサービスセンターも100Pの不具合発生を認めています。 |
大
|
比較的新しい機種なのでつぶやき上梓時には故障例が少なかったですが、最近故障報告が急増しています。手を出さない方が良いでしょう。 |
EOS-1N |
94/11 |
ダンパーゴム付着による不具合の情報はネット上、カメラ店ルート共にありません。フラッグシップ機ですからシャッター構造が違います。 |
大丈夫 |
問題ないと思われます。 |
EOS55 |
95/9 |
2005年1月にEOS55でシャッター幕に油状の汚れが付着した中古が新宿Mカメラで販売されていました。Mカメラに問い合わせた所、古いEOSに付く油状の汚れと同じものとの事です。
その後、別のEOS55でシャッター幕の写真入り、高速シャッター不具合品の確認をしました。 |
中
|
2005年1月、ついにEOS55の発症例が確認されました。95年発売なので、シャッター対策されたという96年以前の個体の問題なのか、EOS55全体の問題なのかは今後の動向を見守る必要が有ります。読者がキヤノンサービスセンターに問い合わせした所、95年製造のEOS55にはダンパーゴム付着の可能性ありと回答したそうです。また96年1月製造の個体でもダンパーゴムの付着が確認されています。 |
New Kiss |
96/9 |
ダンパーゴム付着による不具合情報はネット上にありませんし、読者からの報告もありません。但し一件だけカメラ店がNew
Kissのシャッター不良修理を扱ったという事例があるようです。ダンパーゴム付着の不具合かどうかは不明です。 |
小?
|
多分、問題ないと思われますが、少し不安ですね。 |
2002年1月につぶやきを上梓してから実に多くの情報が寄せられましたが、現在、最も信ぴょう性が高いと思われるものは、キヤノンが1996年にダンパーゴムの材質を改善したというものです。それを裏付けるように、別の読者の方がキヤノンサービスセンターに問い合わせしたところ、1995年製造のEOS55にはシャッターへのダンパーゴム付着の可能性があると回答があったそうです。但しダンパーゴムの具体的な改良日は不明ですから1996年製造なら100%安心と考える事は出来ないでしょう(1996年1月1日に改良されたわけでは無いでしょうから)。またゴムの改良による耐加水分解の寿命がカメラの寿命(数十年)に対して十分に長くなったのかも不透明ですから、1997年以降に製造されたカメラの状況も長い目で見守りたいと思います。
引き続きEOS5, EOS55, EOS7, EOS7s, EOS New
Kiss以降のKissシリーズにもし発症事例がありましたら情報提供お願いします(出来るだけ伝聞ではなく、実物確認をお願いします)。
参考までに、読者の方(payforeさん)から2005年1月に実体験に基づく情報をメールで頂きましたので、御本人の許可の下で転載します。
こんにちは。私もEOS一筋?でシステムを組んでおり、いつかメールを出さしていただこうと思っておりました。今回EOS55の記事を読んで微力ながら情報の足しになればよいかと思いメールさせていただきました。(中略)
私は趣味でいろいろなEOSを収集&オークションで販売しています。その中でつぶやきに掲載されている中で危険度「大」は100%トラブルが発生しています。
私もEOS55を使用していましたが、ゴムの付着はありませんでした。
EOS630は思い入れがあるカメラなので二台とも一年ほど前にキャノンサービスでシャッター幕とダンパー交換を行いました。約¥8500程度の修理代金で。先日別件でキャノンサービスに寄ったときに話を聞くとまだシャッター幕については在庫有で交換可能との事でした。またELバックライトは一年前にはありましたが最近欠品になったようです。
EOSkissはゴムダンパの溶け出し&内蔵フラッシュチャージせずで同じくキャノンサービスに出したところ、ゴムダンパ&幕の交換はサービスでフラッシュの修理代金のみの請求でした。
ちなみに別のkissは自力で分解し、ゴムダンパが着く所にモルトを貼り付けて見ました。分解すると解けたゴムの除去は5分で終わりますが、分解・組み立ては3時間ぐらいかかりました(汗)とてもメンドクサイです(笑)シャッター速度は未調整ですが、全速大丈夫でした。
分解しないでゴムダンパの除去を行うときは少し固めの薄いプラ版などで引っかけをつくり、一気に固まりを引っ掛けて取ると後々楽ですし、一年たっても再付着はありませんでした。ベンジンでふき取ったあと、レンズクリーナーで幕を拭いてやると綺麗になりますよ。
T90のシャッターについてですが、あまりシャッターを切らないでいるとギヤ?などの動作部分が固着し、EEEの表示がででしまうトラブルが多いらしいです(私のもそうでした)。その修理に際して固着しにくいようにやわらかめのオイルを使った場合に流れてくるのでは?とのことらしいです。T90のシャッターは固着するのが殆ど(全部?)なのでシャッター幕が汚れた物は修理担当の方は見たことが無いそうです。
あと友人のEOS5、私のNewkiss、3はノントラブルです。5や10・100はグリップが粘ついて困りますが…。
(2005.10.15追伸)
カメラ修理屋さんからの情報で、確認した数は少ないのですが、T90のシャッターユニットにもゴムダンパーのような粘りがついた固体を発見したとの事です。
(2006.1.25KEN追記) EOS620のシャッターにゴムダンパー付着の症例が報告されました。 |
結論として、中級機ならEOS7、入門機ならNew Kiss(念を入れるならKiss
III)以後のカメラ、及びEOS1シリーズ、EOS3以外のカメラは、特別の思い入れとシャッター故障の覚悟が無い限りは手を出さない方が身のためかも知れません。
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