PRO-MINIを超える、i mini(ベルボン・ULTRA
MAXi mini)
KENのつぶやき vol. 281
(2007.12.2)
つぶやき85「プロの意義(スリック・ミニ
vs. プロミニ)、2001年5月19日」、及びつぶやき86「小さな巨人対決(スリック
vs. マンフロット)、2001年5月26日」で代表的なコンパクト三脚であるスリック・ミニ、スリック・プロミニ、マンフロットテーブルポット(209+342)を比較しました。その頃からプロミニとマンフロット209+342は私が状況に応じて使い分け、愛用するコンパクト三脚として君臨してきました。それから6年の月日が過ぎて、ついにプロミニを超えたと思える商品が発売されましたので、2007年6月の欧州出張の前に購入し、欧州で存分にその威力を発揮してもらいました。それが今回紹介するベルボンのULTRA
MAXi mini(大小文字が混在していますが、読みはウルトラマックスアイミニ)です。
念の為に書いておけば、上記以外にもコンパクト三脚の代表格としてはベルボン・ミニF(生産終了)と、スリック/ケンコーのローアングルエキスパートがありますが、私の選択基準の中にコートのポケットに入る、あるいはレンズ収納スペースに納まる縮長20cm程度以下の三脚、というのがありまして、ミニF(約30cm)とローアングルエキスパート(31cm)は検討対象外になっています。
では、ここからはベルボン・ULTRA MAXi mini、スリック・プロミニ(現行品はプロミニIII)、マンフロット209+342を比較して行きたいと思います。
♪ |
ULTRA MAXi mini |
PRO-MINI
生産終了品 |
PRO-MINI III
現行品 |
Manfrotto 209+342 |
刑式 |
5段脚、3段階開脚、自由雲台(分離可能) |
2段脚、1段階開脚、自由雲台(分離可能) |
2段脚、1段階開脚、自由雲台(分離可能) |
1段脚、1段階開脚、自由雲台(分離可能) |
縮長(mm) |
195 (196*) |
210 (205*) |
205 |
189* |
最低高(mm) |
136 (137*) |
185* |
200 |
110* |
最高高(mm) |
477 (468*) |
245 (240*) |
248 |
110* |
重量(g) |
580 |
330 |
320 |
200 |
ケース |
ビニールケース
|
布ケース
|
布ケース
|
無し
|
税込価格 |
12600円 |
当時7140円 |
6510円 |
当時8715円
(345は13650円)
(709Bは7140円) |
注:アスタリスクのある数字は実測値。無印はメーカー発表値。
マンフロット345は脚209、雲台482、延長ポール259B、バッグ345BAGのセット。
マンフロット709Bは脚209と雲台482 (?) のセット。私所有の雲台342は廃番。 |
先ずは主なスペックの確認を。ここに挙げた三つの三脚はいずれも20cm前後の縮長を持っています。ULTRA
MAXi miniは5段に伸縮し、三段階に開脚角度を変えられる脚を持ち、飛び抜けて多機能になっています。その分重さが580gと重く、値段も高くなっています。プロミニを超えるべく開発されたのは明らかで、価格と重量を除いて機能的に下回る所は何もなく、つまり「より高く、より低く、収納時はよりコンパクトに」出来るようになっており、プロミニ同様にケースも付属します。
プロミニは二段に伸縮する脚を持ちますが、その調節幅は極めて小さいものです。
マンフロットはアルミ無垢の三脚で、使用時の可動部分が雲台以外に何も無い代わりに、その剛性感には見た目からは想像出来ない良さがあります。私の持っているセットは現在廃番で、345という延長ポールとケースを追加したセットが現行品の様です。709Bはほぼ私の持っているセットに近い物ですが、ごく一部のお店でしか表示が無く、廃番の様です。
ULTRA MAXi miniの外観です。この写真からは分りませんが、何と5段三脚です。脚そのものをひねってロックを緩めて伸縮、逆方向にひねってロックになっています。出てくる最下端の脚は頼りないほどに細い物ですが、長さがなく、ロック機構がしっかりしているので思いの外剛性感があります。脚の付け根を見ると分るように、開脚角度が三段階に調節出来て、ほぼ水平まで脚を開く事が出来ます。長く伸び、水平に近く開く脚を持つことがこの三脚の撮影現場での使い勝手を極めて良い物にしています。
脚にソフトウレタングリップが付いています。一般的に冬場に冷たくて持てなくなるのを防ぐ装備ですが、これだけ小さい三脚だと指一本分の長さにしかならず、実用的に殆ど意味はありません。まあ、デザイン上のアクセントでしょうか。これで本格三脚という雰囲気が伝わるのは確かです(笑)。
雲台にQHD-51を採用した所にベルボンの本気を感じますね。この自由雲台は高さ79mm、重さ180g、単品定価6090円というかなりしっかりした物です。ひとつクラス下のQHD-41だと高さ62mm、重さ100g、定価2940円ですので、付け替えると17mmの高さと80gの重さを節約する事が出来ます。なおこの雲台の新品時はボール部のグリスが過多でカメラをロック出来ませんでした(力を加えると動いてしまう)。だから使用前にボール部のグリスをティッシュで念入りに拭き取った方が良いです。
三つの三脚を並べた所です。左からULTRA MAXi
mini、PRO-MINI、Manfrotto 209+342です。
上の写真は収納時状態の比較ですが、全長はスリック>ベルボン>マンフロットになります。写真ではベルボンがスリックとほぼ同じに見えますが、それは雲台にある角が丁度上に来ているからで、45度雲台を回転させると高さを角の分だけ節約出来ます。
三脚の機能がそのまま全体の嵩に反映されていて、太さではベルボン>スリック>マンフロットになります。マンフロットはバッグの隙間に入り込んでしまうほどコンパクトなので、私は常に持ち歩いています。ベルボンとスリックを持ち歩く場合は運搬スペースの準備が必要になります。
下の写真は最低高としての使用状態です。何もないマンフロットが一番低くなるのは当然として、ベルボンは分割エレベーターコラムと、三段階開脚調整機能により水平近くまで開く脚によって、スリックよりも大幅に低い地上高を実現しています。
最高地上高の比較です。5段三脚でエレベーターも持つベルボンが一気に他を引き離します。脚は頼りないほど細い物ですが、絶対的な短さとロック機構の確かさによって見掛けによらない剛性感があります。マンフロットは何も出来ません(笑)。
ベルボン・ULTRA MAXi miniの特質が最も端的に現れるテストを一つ。パワードライブブースターPB-E2を付けたEOS-3に、少し重めの三脚座の無いレンズとして、Voigtraender
MACRO APO LANTAR 125mm F2.5SLを装着して、縦位置撮影が出来るかどうか試してみました。スリック・プロミニはどのようにしてもカメラを保持する事が出来ず、このようにコケてしまいます。Kiss系にキット標準ズームの様な軽量で、三脚取り付け穴とカメラ重心の距離が大きくならない様な組み合わせでないと、脚の短いプロミニは縦位置でカメラを支える事が出来ません(希に出来る事もありますが、非常に不安定でアングル調整が出来なかったりします)。更に脚の短いマンフロットはテストするまでもありません(笑)。
つぶやき86「小さな巨人対決(スリック
vs. マンフロット)」で三脚座のあるSigma AF APO Macro 180mm F3.5EX HSMとEOS−1NHSを使って、プロミニでもマンフロットでも縦位置撮影出来る写真を掲載していますが、この場合は三脚座の三脚取り付け穴の位置がカメラ底面よりも更に中心部に来るので例外的に出来るのです。カメラ側の三脚取り付けネジを使うと出来ません。
ベルボン・ULTRA MAXi miniの場合はほぼ水平に脚を伸ばす事が出来るので、この条件の悪いカメラを縦位置で支える事が出来ます。5段ある脚の内で3段だけ伸ばせばご覧のようにカメラを安定して支える事が出来ました。
大きさがほぼプロミニと同じで、脚の長さと開脚角度を、個別に、大幅に変える事の出来るベルボン・ULTRA
MAXi miniは役に立つ機材です。花撮影の様なローアングル撮影で急傾斜地などの足場に変化が富んだ所でも個別に脚を伸縮開閉して対応出来ますし、海外出張などで大きな三脚が持ち歩けない時でも、この三脚があれば殆どの状況に対応出来ます。6月の欧州出張時に現地の教会とか名所を回りましたが、プロミニであれば撮影出来ないか、出来たとしても地表近くまで顔を近づけるという無理な姿勢を強いられた状況において、より楽な撮影が出来ました。
上の写真はドイツ・ボン市にある、クラシック作曲家のローベルト・シューマンと、その妻クララ・シューマンが眠る墓をEOS55で縦位置撮影している時の様子です。プロミニでは縦位置撮影出来ませんし、横位置撮影の場合でも地面付近にカメラが来てしまうので、ファインダーを覗く姿勢はかなり苦しい物になります。ULTRA
MAXi miniは高さがある上に、脚の開脚角度を調節出来るので、脚を全部伸ばして且つ一段開いて使った結果、カメラでどの様な構図調整をしても三脚が安定していて、迅速で楽な姿勢での撮影が出来ました。
この三脚の最大の欠点は580gという重さですが、その一端は頑丈な雲台から来ています。目的に応じてより軽量な雲台に交換すれば100g程度の軽量化は可能で、上の写真も良く見るとお分かりになると思いますが、出張時の荷物重量軽減の為に雲台はプロミニの物に付け替えています。
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