ハーフNDフィルター用・結露防止ヒーター
KENのつぶやき vol. 383 (2013.11.16)
フィッシュアイレンズ用、幅1cmの汎用レンズ用に続く、自作の夜露防止ヒーターの第3弾です。ただハーフNDフィルターは必ず夜が明けた後に使うので、夜露防止ヒーターよりも結露防止ヒーターと呼ぶ方が相応しいでしょう。
天体撮影をされているベテランの方がこう書かれています。
「夜露の状態を知る目安として、プラスチックの無色透明なもの(ケースなど)を、身近に置いておくと良いです。レンズが曇るよりも前に、そのケースが曇ります。」
ハーフNDフィルターはプラスチック製の透明な板で、レンズの前に空中に浮く形で装着されます。条件としては上記のベテランの方のアドバイス通りのもので、すなわちレンズよりも先に曇る厄介なものです。
ご覧のようにレンズ本体から浮く形で装着される上に、ホルダーはLEE製も他社製も熱を伝えにくい樹脂で出来ているので、レンズに夜露防止ヒーターを付けても結露を防ぐことは難しいのですが、ネット上にハーフNDフィルターの結露防止策を見つける事は出来ませんでした。
上から降る夜露の場合、フードを使うとある程度は抑制出来ますが、この写真の日はとても寒くて、カメラもフィルターも結氷してしまい、撮影続行出来ませんでした。そこでヒーターの自作を目指しましたが、方法をあれこれ考える内に1年以上が経ち、先日やっと第一号が完成しました。
通常、私がこの種の工作をする際にはダイソーを初めとした100円ショップで材料調達して、安価に仕上げるのですが、今回はレンズの前にぶら下げる物なので、変な反射を防ぐ為に全てを「マットブラック」で揃えるため、結果的にダイソーで買った物は無く、全て一つ1000円弱のコストの材料で作っています。総経費は3000〜4000円ぐらいでしょうか。
先ずは基材となる、マットブラックの発泡ポリプロピレンシートです。東急ハンズで850円で入手。
次いで、ニトムズ製のアルミテープ・ブラックで、約1000円也。普通の銀色アルミテープなら100円なんですけど、マットブラックはこれぐらいしか無く、選択肢無し。右側は耐熱性極薄絶縁テープの「カプトンテープ」、またの名を「ポリイミドテープ」。耐熱温度は260度で、日本製だと数千円という目の飛び出る価格ですが、中国製のこれは600円程+送料でした。
ヒーター部分は以前1cm幅の夜露防止ヒーターを自作したときと同じ材料です。左は100円ショップセリアで販売されていた、マイクロUSB→iPod/iPhoneドックコネクターの充電変換コード。105円でマイクロUSBのメス端子が手に入り、USBケーブルでありながらデーター線が無く、配線に迷わずに済む事と、内部がリッツ線ではなく通常の銅線なので半田付けが楽な事がメリットですが、残念ながら既に販売中止の様です。私は現役時代に買い溜めしてあるので、自分の在庫から調達しました。
右側はアマゾンのマーケットプレイスで購入した、0.2mm径、抵抗値34.4オーム/mのニクロム線。他のニクロム線は抵抗値が低すぎて、USB電源で使う為の10オーム(5V 0.5A)を得るのに1m近い長さが必要になりますが、これは細くて抵抗値が高く、30cmで10オームが手に入ります。購入価格は400円程度+送料だったと思います。
工作の第一歩はヒーター部の製作で、余裕を見て35cmに切ったニクロム線をUSBケーブルに半田付けし、熱収縮テープで保護します。カメラ二台以上の体勢でいつも撮影しているので、二セット作りました。
次いで発泡PPシートをLEEのホルダーの大きさに合わせて切り出します。大きさは縦13cmx幅11.5cmにしました。
その片面にアルミテープを貼り付けます。アルミテープはニクロム線の熱を広い範囲に伝えて、ハーフNDフィルターをジンワリと暖める為に用いました。ニクロム線による局所的な温度上昇を防ぐ目的もあります。さもないと基材が溶けてしまいますので。
アルミテープを貼った発泡PPシートに撮影用の窓を開けます。LEEのフィルターホルダーの開口部を邪魔しないように、高さ7cm、幅9.5cmにしました。縦位置撮影時を考慮して開口部を空けると枠が大きくなりすぎて熱が逃げる気がしたので、縦位置撮影は考慮していません。その場合は一時的にヒーターを外すことで対処の予定です。
開口部は発泡PPシートの上側にややオフセットし、ヒーターを付ける下側の幅を広くしました。
アルミテープ自体には導電性がありますので、ショートを避ける為に、ニクロム線を配置する所にカプトンテープを貼ります。
ヒーターの装着ですが、先ずは発泡PPシートに小さな穴を二つ開け、USBケーブルの外部被服のある丈夫な所を針金の様な物で縛り付けて、引っ張ってもヒーターの脆弱な部分に応力が掛からないようにします。この針金は実は1/4W抵抗の脚で、この種の加工には打って付けの縛りやすさを持っています。電子工作する度に発生する抵抗やコンデンサーの脚は貴重な材料で、大切に取ってあります。皆さんが工作する場合には勿論普通の針金でもOKだと思います。針金の反対側は捩ってトゲのように出っ張っていますので、怪我をしないようにペンチで潰してから、アルミテープブラックを貼っておきました。
カプトンテープの上にニクロム線を互いに接触しないように配置したら、その上から再度カプトンテープを貼り付けます。ニクロム線の長さがあり、折り返す関係で、第一層のカプトンテープは右端まで行かず、折り返し代を残した長さにしてあります。
ニクロム線を折り返してから、もう一度カプトンテープを貼り付けて、完全な絶縁状態にします。カプトンテープは極めて薄いので、熱はよく伝わる筈です。
仕上げに、アルミテープを上から貼り付けて概ね完成です。
LEEのホルダーへの装着は色々と悩みましたが、一番簡単なベルクロによる装着とし、丁度良い位置にベルクロのオスを取り付けました。
ヒーター取付前のLEEのホルダーにハーフNDフィルターを付けた状態。赤い矢印の所にベルクロのメスを貼り付けました。
そしてヒーターを取り付けた状態です。
真横から見ると、ヒーターはフィルターから浮いていて、暖かい温風の対流でフィルターをやんわりと暖める方式になっています。まだ実戦に持ち出していないので、効果の程は分かりませんが、ヒーター部はかなり暖かくなるので、何も付けないよりは効果があるはずです。ただ場合によってはヒーター部とフィルターを熱的に繋ぐような工夫が必要かも知れません。
周りの機材が結露するような状況で実戦に用いたら、結果報告を追記することとします。
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