三次盆地の霧のギャラリー

広島県北部にある三次盆地は、盆地の霧としては日本有数の名所です。秋から冬にかけての夜半から日の出後2時間ぐらいにかけて、殆ど毎日のように濃霧が発生します。それを盆地周辺の標高450m以上の場所から見れば、見事な霧の海として見ることが出来ます。ここでは、三次盆地には限りませんが、三次付近で撮影した霧の写真達を展示しています。

霧は気まぐれだし、天気も気まぐれ。さらに朝焼けや日の出の状態も気まぐれですから、足繁く通ってこの三者のご機嫌が揃う時に居合わせないと良い作品には恵まれません。霧の海の撮影初挑戦の年となった2001年には10月中旬から12月中旬にかけてほぼ毎週末、朝3時起きで撮影に出掛けました。その成果がここにある写真達です。

霧は白色ですが、これは周りの光の色に染まるという事です。明け方から日の出後30分ぐらいにかけて光線状態とその色は目まぐるしく変わるため、霧も様々な表情を見せてくれます。2001年、沢山の写真を撮って思ったことは、

「霧は色だ!」

です。光線状態だけではなく、フィルムの発色傾向の微妙な差によってもその表情を変えてしまう霧の海は、奥の深い被写体の様です。

2001 Autumn - Winter
Midnight Green
2001年最後の撮影となったこの日、下にあるMoonlight Blueを撮影したときと同じように半月が天上にありました。しかし月は薄い雲に隠れて、光量は遥かに不足し露出計がまともに動かなかったので、ヤマカンの露出です。月明かりが少ない分、街明かりが浮かび上がり、その緑色が画面のアクセントとなりました。
Moonlight Blue
この日は天気も良く半月が明け方まで天上にあり、山あいに漂う霧を明るく照らしていました。E100VSは月明かりだと青く発色するんですね。光線状態が多少違うとは言え、上のトレビ100Cとは全く異なる発色をしています。超スローシャッターで霧が流れ、鉄塔の赤いランプがアクセントとなって幻想的な写真になったと思います。
上の写真から時間が経ち、薄明が始まって少し明るくなった頃の情景ですが、フィルム上では同じようなトーンで再現されています。しかしシャッター速度が速くなったので、画面上の霧の流れが無くなり、赤ランプのにじみも小さくなっています。こんな小さな変化があるから、真っ暗な時間から霧の海の撮影に出掛けたくなるのです。フォトテクニック2004年11/12月号 My Precious Moments 掲載
Twilight Orange
一見明るい情景に見えますが、まだ肉眼では地表の景色をはっきりとは識別できないぐらい暗い時間の情景です。星野観望用の双眼鏡を用いて景色を確認し撮影しました。薄明は肉眼ではほとんど色を感じませんが、フィルムにたっぷりと露出すると、予想以上の色に再現されます。
Orange in Blue
この写真を撮った日は天気が悪く、時折小雨がぱらついていました。しかし東の空の地平線付近だけ雲が切れて、朝日はスポットライトの様な陽光を注ぎました。
これはまた別の日の写真です。かすみが地平線付近にあり、日の出はこの様な高い位置からとなりました。日の出の位置を境として、はっきりと2色に別れた空、日の出は毎回その表情を変えるので何度も通って撮影したくなるのです。

Morning Sepia
これはMoonlight Blueの写真と同じ日の作品です。この日は地平線付近に厚いかすみのような物があり、真っ赤な日の出を見ることが出来ませんでした。しかし、少し高度の上がった太陽は、セピア色の斜光線を霧の海に注ぎ、却って立体感のある情景を恵んでくれました。
上の写真よりもより遠くまで拡がりを持たせた構図です。セピア色の斜光線がもたらす霧の海の立体感は、この情景に奥行きを持たせていると思います。こんな景色を見れるのはホンの僅かな時間だけです。この瞬間を求めて早起きをして遠い撮影スポットまで出掛けるのです。

Sunrise Red
これはMidnight Greenと同じ2001年最後の撮影の日の作品です。やはりかすみが地平線付近にあり、日の出は高い位置からだったのですが、穏やかな朝焼けに恵まれて、霧はダイナミックな表情を見せてくれました。その前奏曲的な情景です。
太陽高度が少し上がると、赤い斜光線により霧の海は深い陰影を見せます。また気温の上昇と共に激しく運動を始めるため、この様なダイナミックな写真になります。穏やかな朝焼けも、アンダー気味の露出でフィルム上には情熱的に捉えられています。
その霧の海のダイナミックな表情が頂点に達したときのカットです。まるで激流か燃え盛る炎の様な感じです。

Morning White

墨絵のような白と黒だけの写真もまた趣きがあると思います。上にある写真達は晩秋の岡田山から撮影していますが、この二枚の写真は霧のほとんど出ない春(3月)の可愛川上流の山麓からの撮影です。この日の朝は曇っていて、朝焼けは無く、従って白い霧の写真になりました。絶えず流れる霧の状態がちょうど良くなるのを待って撮影しています。
レンズの向きを少し変えて、山並みが二層になる場所を撮影しました。
Appendix (おまけ)
Scene of Heaven ?

雲海の上に一筋の道。その先には十字架...夜明けの中に、明星が輝く。
フォトテクニック・ノンセクション部門「もうすぐ必撮」

Daybreak

三次市・高谷山での日の出。通常は邪魔な桜の枝を思いっ切り取り入れて...超広角14mmで捉えた幻想風景。

Autumn Morning

沢山の落葉が朝霧に濡れて...静かな時間。