シグマの新型180mmマクロレンズを購入しました。つぶやき10「憧れの180mmマクロ」では、なかなか180mmマクロレンズに手が出ない悩みを綴りましたが、日頃の行いが良いためか(笑)、殆ど未使用の中古を格安で見つけることが出来ました。その様子はつぶやき43「良い中古レンズと巡り合うためのおまじない(2)」に綴っています。
今回は、初めて手にした180mmマクロを使ってみて、その感想を書いてみようと思います。このつぶやきを書いている時点では雑誌評価記事が殆ど有りませんので、日本初の(大袈裟!)本格インプレッションかも知れません。
先ずはカタログスペックの整理を。
名称 ;SIGMA APO MACRO 180mm F3.5 EX/IF
HSM for Canon
レンズ構成 ;10群13枚
画角 ;13.7゜
最大撮影倍率;等倍
最短撮影距離;46cm
絞り羽枚数 ;9枚
最小絞り ;32
フィルターサイズ;72mm
最大径x全長;80x179.5mm
重量 ;965g
長い名称ですが、APOは特殊分散硝子を使っている証拠。2枚のSLD硝子を用いて色収差を消しています。EXは最近のシグマのレンズに与えられる名称で、鏡筒表面が艶消しグレー色で、金粉をちりばめたような輝きを持っています。比較的傷が目立ちにくく、高級感ある仕上げで個人的に気に入っています。IFはインナーフォーカス。等倍までフォーカシングしても全長が変わりません。一般的な前群繰り出しであるタムロンマクロの場合は、フォーカシングによって5cmぐらい鏡筒が伸びます。HSMはキャノン流に言えばUSM。超音波モーターによる静かで俊敏なAFを謳い文句にしています。
レンズ全長は約18cmですが、実際に前後キャップを付けた状態では20cmあります。更に9cmもある立派なフードが付属しており、撮影状態では28cm程の長さになります。従って、等倍時のフード先端から被写体までの距離は約15cmほどになります。ですから望遠マクロと言っても、傍目にはそんなに離れて撮っている感じはしません。但しタムロンマクロは等倍時撮影距離29cmで、フードを付けたときの全長は21cmぐらいありますから、フード先端からの距離はホンの5cm強です。差があると言えば有りますね。いずれも虫などを脅かさずに撮るには、フードを外した方が良いかも知れません。
重さは1kg弱。タムロンの倍以上ですが、180mmマクロとしては軽い方です。立派な三脚座がついています。フードは9cmもある大型の物で、内側には反射防止溝が切られ、装着はバヨネット方式。クリックストップもあるよくできた物です。
使った感じをキャノンのEF 180mm F3.5 L Macroとの比較で書いてみましょう。但しキヤノンの方は店頭で(かなりしつこく)触った感じとの比較です。
AFについて。マクロレンズの場合はフォーカスレンズの移動量が普通のレンズよりも圧倒的に大きいため、AFの快適さは一般のレンズ並みとは行きません。ちなみに180mmクラスの一般的な最短撮影距離である1.2mと、等倍マクロの最短撮影距離46cmとの間には、フォーカスリング回転角で実に6倍の違いがあります。AFが迷った時には延々と等倍近くまで(つまり一般のレンズの6倍もある道のりを)レンズが移動し、それから戻ってくるので優に1秒以上待たされてしまいます。これは全てのマクロレンズに共通する宿命で、これを軽減するためにフォーカスリミターが付いています。しかしシグマの180mmはこの切り替えが61cmの所にあり、リミターを使っても実に1/2倍から無限遠まで撮影できてしまいます。これではリミターの意味がありません。キャノン180mmの場合は1.5mで、リミターを使うとAFが極めて狭い範囲だけで作動するので、一般撮影で極めて快適です。この点ではキャノンに分があります。
なお、フォーカスリミターはキャノンもシグマも電気的なもので、MFではリミターの位置に関わりなく、等倍から無限遠まで撮影できます。ちなみにタムロン90mmのリミターはメカニカルな物なので、MFでも制約を受けてしまいます。
AF性能そのものの比較ですが、暗い状況だとシグマのAFはかなり性能が悪いです。一般のレンズなら簡単に合焦するはずの物に、合焦せずに行きすぎてしまいます。また、フォーカスが合う時でもククク、ク、クという感じで、迷いながら合焦する感じです。但し屋外などの明るい場所でなら、問題はありません。
一方のキャノンは、やはり暗い状況だとやはりククク、ク、クと迷う感じはありますが、総じて吸い寄せられるようにAFが合焦し、シグマとの違いを見せつけます。AF性能については全面的にキャノン180mmの勝ちです。
マクロの命のマニュアルフォーカスですが、シグマのフォーカスリングのフィーリングは、残念ながら褒められた物ではありません。妙なフリクション感があり、微妙なピント合せに神経を使います。これはシグマでも180mmマクロだけの欠点だと思われます。おなじシグマのHSM方式を使った70-200mm
F2.8 EXの方は特に問題ないからです。一方で、店頭で触った別のシグマ180mmマクロもフリクション感あるフォーカスリングを持っており、個体差では無さそうです。この点キャノン180mmの方は問題無く、スムーズなフォーカスフィーリングを持っています。再度キャノンの勝ちですね。
フォーカスフィーリングに関してはキャノンと言えども、タムロン90mmのダイレクトかつ絹の様な滑らかさを持つフォーカスリングには適いません。
シグマの180mmマクロの場合、シグマ純正のテレコンバーターを使うと、等倍以上の撮影が出来るようになります。私は1.4倍のテレコンバーターを持っていますが、これを使うと最大撮影倍率は1.4倍になります。開放F値はF5になりますが、カメラ側の表示もちゃんと補正されます。またAF連動範囲は1.2mまでとなり、それ以下だと自動的にMFに代わります。描写の方がまだ確認していませんが、純正の組み合わせは優れた操作性をもたらしているようです。キャノンの180mmマクロと純正エクステンダーの組み合わせでも同等の操作性が得られるはずです。
シグマのレンズに共通する欠点として、レンズ内反射処理がお粗末で、逆光時にコントラスト低下をきたす事があります。シグマはレンズの縁の部分に反射処理塗装をしていない様で、レンズを光源に向けてマウント側から覗くと、レンズの縁が白く明るく反射しているのが簡単に確認できます。これは70-200mm
F2.8 EXを含めて高級、廉価を問わずすべてのシグマレンズに共通する欠点です。180mmマクロも例外ではありません。しかし面白いことにフォーカスリングを等倍側に回して行くと、あるところから光学的にレンズの縁が見えなくなってしまい、全く反射が無くなってしまいました。従って、撮影倍率の高い状況では高コントラストの撮影が期待できそうです。
レンズ本体の感想はこれぐらいにして、次はレンズの描写の印象を写真を交えながら記して行きたいと思います。
つづく
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