EOS 7の事を取り上げるのは今回で3回目です。まだEOS
7発売前にセールスマニュアルによる感想をつぶやき54で、またつぶやき99ではEOS
55との対比でEOS 7の事を幾つか取り上げています。その後いろいろな記事を読み、私もカメラショップでEOS
7による店頭実験をしてみたりして、カタログや雑誌に書かれていない事をいろいろと発見しましたので、再度EOS
7を取り上げることにしました。
EOS 7は現在、入門機Kiss III Lと、殆どフラッグシップ機と呼んでも良いEOS
3との間の広大な隙間を埋めるただ一つのハイアマチュア向けのEOSです。作品製作に不満の少ないキャノンの一眼レフが欲しいが、新品で10万円以上は払えない人にとっては唯一の選択肢です。ですから10万円以下で新品EOSが欲しい人はこれから後の文章を読む必要はありません。Kiss
III Lと7の比較は論を待たないからです。
中古のEOSでも良い、となるとEOS 7以外にEOS 55とEOS
5、あるいはEOS-1NやEOS 3も範疇に入ってきます。中古実売価格はいずれも10万円を下回ります。2002年7月時点の中古良品安値相場で、EOS
5、EOS 55がいずれも2万円台後半から3万円台前半、EOS 7で5万円台、EOS-1Nで7万円台、EOS
3で8万円台ぐらいでしょう。EOS-1NかEOS 3の中古に手が届く人も、EOS 7の事で迷うことは無いでしょう。新品定価で二倍からそれ以上も違うフラッグシップ機は中級機には無い良さが沢山ありますので、迷わずそちらをオススメしておきます。
問題は中古の中級機選びです。EOS 7の中古が良いか、ちょっと古いけどEOS
55やEOS 5の中古が良いか...この悩みを持つ人は多いと思います。それ以前の中級EOSにはシャッター膜の不良という持病がありますので、選択眼のある人以外にはオススメしません。そこで7、55、5の比較を...と行きたいところですが、ちょっと手抜きをさせて頂いて、EOS
5は比較対象から落とさせて頂きます。良いカメラではありますが、ハイスピードシンクロ、EーTTLが無いこと、縦位置で視線入力が使えないこと、リモートケーブル端子が旧型の使いにくいものであることが主たる「オススメしない」理由です。これらを気にしない方、及び1/8000秒や秒間5コマのモードラが必要な方には良いカメラです。
さて、EOS 7とEOS 55の一騎討ちですが、主な異なる点についてKENの視点でEOS
7の方が良い点、逆に負けている点の順で並べてみましょう。
<EOS 7がEOS 55よりも勝っている点>
1 視度調節がある
これは視線入力機としてはEOS 7にだけある機能で、EOS
3にもありません。従来から視線入力はメガネをかけている人には精度が悪いという評判がありますので、視度調節により裸眼で写真撮影できれば、それだけ視線入力を活用できますし、アイリリーフが短くなりますので、クリアにファインダー全視野が見渡せるようになります。
2 シャッター巻き上げ速度4コマ/秒
EOS 55の2.5コマ/秒に対してEOS 7は4コマ/秒です。その速さを活かす機会はスポーツ撮影でも無い限り少ないでしょうが(またその様な場面では4コマ/秒でも不足するはず)、ファインダー消失時間が短くなる事が何よりのメリットだと思います。またマクロ手持ちのAEBでも、3枚撮影するのに1秒かかりませんから、3枚連続撮影してもピントに自信が持てるでしょう。私は被写体の動きが殆ど無い時にはEOS
3(4.3コマ/秒)で3枚連続AEB撮影を手持ちで時々しますが、ピントを外したことはありません。
EOS 3に匹敵する巻き上げ速度ですが、シャッターの音質まで期待すると裏切られます。EOS
7のシャッター音はパコパコした安っぽいもので、EOS 55やKissなどと同列のものです。EOS
3やEOSー1N/1Vの様なキレの良さはありません。
3 被写界深度確認ボタンがある
EOS 55の場合は二通りの方法で被写界深度確認が出来ます。一つはファインダーの左上にある四角いマークを見ると、視線入力により絞り込みが行われる事です。もう一つがカスタムファンクションでAEロックボタンによる絞り込みが可能になります。このAEロックボタンによる絞り込みはあらゆるEOSの中で最も操作性の良い被写界深度確認方法です(EOS
100やEOS 5にも付いています)。これがEOS 7から無くなったのは残念ではあります。
代わりにEOS 7には独立したボタンがマウント正面右側に付きました。操作性はAEロックボタン程には良くないですが、このボタンによりストロボ撮影時のモデリング発光も出来るようになりました。EOS
55ではモデリング発光出来ません。
4 AFストップ機能がある
これは最新の大口径超望遠レンズ(IS搭載のサンニッパ以上のレンズ)についた機能です。EOS
7はこれに対応していて、EOS 55は当然対応していません。しかし一本60万円以上もするレンズだけに付くこの機能をEOS
7ユーザーが使うのかどうか、???です。
5 上級機と同じミラーアップ機能がある
カスタムファンクションにより、シャッターボタンを最初に押すとミラーアップ、再度押すと撮影、という機能が付きました。EOS
55までの中級機EOSはセルフタイマーを代用としていて、ミラーアップ用に2秒というセルフタイマーモードがありました。しかしこちらは厳密に言えばシャッターチャンスを逃す可能性があり、EOS
7のミラーアップの方が優れています。
6 7点AF
EOS 55はもちろん3点です。この点は説明不要ですね。視線入力検知スピードも向上(120ms→55ms)されていますが、測距点が増えている分CPUが判断に迷う事も多いはずで、実用上の差異は感じられないと思います。
7 縦位置グリップ(バッテリーパック)にAE/FEロックボタンがある
あまり使わないボタンかも知れませんが、このボタンはEOS
55用の縦位置グリップにはありません。
<EOS 7がEOS 55に負けている点>
1 電子接点を持たないレンズでAE撮影が出来ない。
これはカタログには勿論、日本の雑誌にも書かれていない事実です。ケンコーのソフトレンズ、キョハラソフトレンズ、あるいはマウントアダプターを介して使う様々なレンズ、幻のアダプトールEOSマウントによるタムロンのMFレンズなどをEOS
7に装着すると、TTLーAE撮影が出来ません。アメリカのあるサイトには露出値が3段ぐらい狂い、しかもその狂い方に一貫性が無いので露出補正でも救えない、と書いてありました。そこで早速私もEOS
7を手に実験してみました。比較対象はEOS 3です。まず普通のレンズを装着して、均一な色の壁で露出を測定。当然ながらEOS
7とEOS 3はほぼ同じ露出値を返しました。次にケンコーソフトレンズを装着して測光すると、あららEOS
7の返した露出値はEOS 3よりも1から1.5段ぐらいアンダーになってしまいました。EOS
3+ケンコーソフトレンズのAE撮影が正しい結果になることは実証済みですので、やはりEOS
7の露出はおかしく、アメリカのサイトに書いてあったことは事実でした。
今までのどのEOSでも、電子接点の無いレンズで実絞り優先AE撮影が出来ました。しかしEOS
7はそれが出来ない史上初のEOSなのです。その原因は謎です。
※2002/7/20追記;この現象はEOS7だけではなく、D30、D60でも発生します。
2 低照度時のAF性能が悪い
これはアメリカで有名になっているEOS 7の欠点です。カタログを見ると、EOS
55やその他の中級/上級EOSのAF作動範囲はEV0からとなっていますが、EOS 7はKissと同じEV1がAF作動限界です。他のEOSの限界値よりもひと絞り分明るい状況でないとAFが作動しません。AFを売り物にしているキャノンが、中級機の低照度AF性能を入門機並に下げてきたのは何故でしょう??コストダウン→もうけ主義かな?ニコンは逆にキャノンを越すべく、F80
/ F100のAF作動限界をEV-1にしています。
3 AF補助光はストロボが発光する
低照度時のAF性能が悪いという事は、それだけ頻繁にAF補助光が発光される訳ですが、EOS
55が近赤外線による補助光で、人物などをあまり刺激しないのに対して、EOS 7は何とストロボが発光します。これでは被写体となった人物もビックリでしょう。ストロボを使う、使わないに関わらずAF補助光として撮影前にストロボが自動ポップアップして発光します(カスタムファンクションによる発光停止は可能。またクリエイティブゾーンでは手動ポップアップになります)。
美術館などではストロボ撮影を禁止されているところが沢山あります。そんな所でキチンとルール通りに自然光撮影する場合でも、EOS
7でAFを使うとストロボが光りますので、警備員に取り押さえられる事になるでしょう。ルーブル美術館では全自動カメラでモナリザを撮影してストロボを光らせてしまい、警備員に注意されたり捕まったりする日本人が数分に一名いますので、ご注意あれ...
4 測光モード切り替えが、レバーからボタン式になった
EOS 55の良かった点は、様々な設定の切り替えがレバーや大型ダイヤルで出来て、設定状態が一目で確認出来る事でした。EOS
7にもその伝統は継承されていますが、一点、測光モード切り替えは他の使用頻度の小さい設定と同様に、小さなボタンを押しながら選択する方式に退化してしまいました。
5 電池が2CR5からCR123Ax2本になった
これの何が悪いの?? と思われる方も多いでしょう。性能は同じ、電池の実売価格も殆ど同じです。ここで問題にしたいのは、CR123Aを使うEOSは初代Kissと二代目New
Kissだけだった、という事です。最近のKiss IIIシリーズやIXE-50はCR2x2本で、それ以外の歴代EOSは殆ど全部が2CR5です。複数台のEOSを持っている場合、電池形式も揃っていると予備電池の確保が簡単ですし、一つの電池をその日に持ち歩くボディで使い回すことも可能です。サブボディとして旧Kissを使う方ならメリットですが、それ以外のEOSボディを持たれる方は(持つ事を考えられている方)にはデメリットでしょう。EOS
7と併有して使いやすいボディは視線入力機の筈で、EOS 7以外の視線入力機は全部2CR5です。
電池形式など、何故コロコロ変えるのでしょう?キャノンはお客の事をあまり考えていないようで...
6 レンズメーカー製中古レンズには、作動しないものが沢山ある
これはキャノンの責任ではありませんが、シグマやトキナーのレンズの中にはEOS
7で作動しないものが沢山中古市場に出回っています。EOS 7発売以前に生産されたレンズで、前ユーザーによるROM交換がされていないレンズは、シグマの場合は一部のEXシリーズを除いてほぼ全滅です。トキナーもEOS
3(7ではありません)発売以前に生産されたレンズの相当数が作動しません。これらは何れも、その中古レンズが現行商品であるかどうかは関係ありません。メーカーが対策をした前に生産出荷されたレンズは作動しません。同じ型のレンズでも、作動するものとしないものが混在しており、実物をEOS7でチェックしなければ分かりません。これは一部の新品長期在庫品でも同じです。
EOS 55でも作動しないものもありますが、こちらはよほど古いレンズで無い限り滅多に出会わないでしょう。キャノン純正以外のレンズの中古購入を考えられている方は、気にしておいた方が良いことです。詳細はつぶやき121と122を参照ください。
7 ファインダーが暗くて見にくい
この一項目については他人の受け売りです。ある人が店頭で55や5と7を比較したら7のファインダーは見にくかったと申しておりました。ペンタ部にガラスのプリズムではなく安価なミラーを用いたKiss系に近いとの事です。しかし私自身はこの確認を未だしていません。これは是非中古ショップなどで、同じレンズを付けたEOS
55とEOS 7で比較してみてください。
8 その他、個人の主観に関わることなど
・シルバーボディが無くなりました。
・液晶脇にファンクションの絵文字が印刷されるようになりましたが、安っぽく思えます。
9 価格差がやっぱり気になる...
同等かそれ以上の実用性能を持つEOS 55の中古に対して、EOS
7の中古はほぼ倍額です。5万円強のお金を払うなら、私ならあと2万円足してEOS-1Nの中古か、3万円足してEOS
3の中古を薦めます。どうしてもお金が出せない場合でも同じ予算でEOS-1という選択肢もあります(かなり性能の質が異なりますけど)。あるいはEOS
55で2万円節約して、その分良いレンズを買った方が良い作品に恵まれるでしょう。
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